病院の入り口で、僕たちは二匹の猫と別れることになった。規則という冷たい壁の前で、彼らは中へ入ることができない。
「ごめんね。ここからは、僕たちだけで行かなくちゃいけないんだ」
大きな猫と、ちび猫のいくちび。二匹は理解したのか、あるいは僕たちの悲しみに引きずられたのか、何度も振り返りながら「にゃんにゃ、にゃんにゃ」と切なげな声を上げていた。その鳴き声が、次第に夜の闇へと遠ざかっていく。街灯の下、二つの小さな影が家路へと向かって歩いていくのを見送るのは、とてつもなく寂しい光景だった。
ドアが閉まり、二匹の鳴き声が完全に途絶えると、病院内は急激に冷え込んだような静けさに包まれた。
「……本当にお別れなんだね」
あかりが呟く。おばあちゃんを運び込み、手続きを終え、最後には猫たちとも引き離される。この喪失感は、まるで僕たちの心から血が流れているような感覚だ。猫が入れないのは当たり前のことだと頭では分かっている。それでも、この病院という無機質な場所で、たった一人(一匹)で帰らなければならない彼らの背中を想うと、心が千切れるような痛みが走った。
僕たちの心には、今、埋めようのない大きな穴が開いている。
でも、この「洗心」というか、何というか……。この悲しみを全て受け入れ、洗い流そうとする心の動きは、もしかすると、おばあちゃんが最後に僕に見せた、あの不思議な微笑みと繋がっているのかもしれない。
たとえ独りになっても、猫たちと分かち合ったあの時間は消えない。悲しみが心を削るのなら、その削り取られた場所に、新しい物語の種を植えていくしかないのだと、僕は自分に言い聞かせた。
夜の病院の廊下で、僕は誰よりも深く、静かに息を吸い込んだ。
「ごめんね。ここからは、僕たちだけで行かなくちゃいけないんだ」
大きな猫と、ちび猫のいくちび。二匹は理解したのか、あるいは僕たちの悲しみに引きずられたのか、何度も振り返りながら「にゃんにゃ、にゃんにゃ」と切なげな声を上げていた。その鳴き声が、次第に夜の闇へと遠ざかっていく。街灯の下、二つの小さな影が家路へと向かって歩いていくのを見送るのは、とてつもなく寂しい光景だった。
ドアが閉まり、二匹の鳴き声が完全に途絶えると、病院内は急激に冷え込んだような静けさに包まれた。
「……本当にお別れなんだね」
あかりが呟く。おばあちゃんを運び込み、手続きを終え、最後には猫たちとも引き離される。この喪失感は、まるで僕たちの心から血が流れているような感覚だ。猫が入れないのは当たり前のことだと頭では分かっている。それでも、この病院という無機質な場所で、たった一人(一匹)で帰らなければならない彼らの背中を想うと、心が千切れるような痛みが走った。
僕たちの心には、今、埋めようのない大きな穴が開いている。
でも、この「洗心」というか、何というか……。この悲しみを全て受け入れ、洗い流そうとする心の動きは、もしかすると、おばあちゃんが最後に僕に見せた、あの不思議な微笑みと繋がっているのかもしれない。
たとえ独りになっても、猫たちと分かち合ったあの時間は消えない。悲しみが心を削るのなら、その削り取られた場所に、新しい物語の種を植えていくしかないのだと、僕は自分に言い聞かせた。
夜の病院の廊下で、僕は誰よりも深く、静かに息を吸い込んだ。

