しゃべる人形

病院の白い壁が、僕たちの涙を吸い込んでいくようだった。診断の結果は、予想通り、心筋梗塞による突然の別れだった。遺族のいないおばあちゃんのために、僕たちは火葬の手続きという、人生で最も重い事務作業に追われることになった。
その時、廊下の向こうから近づいてくる足音があった。顔を上げると、そこにいたのは藤田ニコルを彷彿とさせる、あどけなさと優しさをあわせ持った看護師だった。吉野家の看板娘のような明るい面影を持つ彼女は、あかりが以前から持病の治療で通い、何度も助けられてきたこの病院の看護師だった。
彼女は僕らの姿を見るなり、すべてを察したように表情を曇らせた。
「……あかりちゃん、それに皆さん。大変だったね。一人ぼっちで……寂しかったでしょう」
その一言で、僕たちの涙腺は完全に崩壊した。さっきまで必死に堪えていた感情が、波のように溢れ出す。僕らは言葉を返すこともできず、ただ彼女の白衣の前で泣き崩れた。
彼女は僕たちの背中を優しくさすりながら、静かに、でも着実に手続きを進めてくれた。僕たちが悲しみで思考停止している間に、彼女は病院の窓口として、火葬の手続き、霊柩車の手配、そして葬儀の日程までを、淀みない手際で整えていった。
「おばあちゃん、きっと皆がいてくれて安心してるはずだよ」
彼女が語る思い出話に混ざりながら、僕らは少しずつ、このあまりにも急な「終わり」を受け入れ始めていた。病院の無機質な廊下で、彼女の優しさと、おばあちゃんとの思い出だけが、この冷たい夜の中で唯一の救いだった。
気がつけば、すべてが決まっていた。僕たちだけで抱えきれなかった重荷を、彼女が一緒に背負ってくれたのだ。僕らはただ、おばあちゃんの最後のために、泣きながら前を向くしかなかった。