翌朝、耳元で母親の苛立った声が響いた。
「秋夫、ご飯だよ! もう起きてるんでしょう? 遅刻しちゃうわよ!」
僕は重い瞼をこすりながら体を起こした。頬にはまだ、昨夜の涙が乾いた痕が残っている。階下に降りると、母は僕の顔を見るなり怪訝そうに眉をひそめた。
「どうしたの、その顔。……何かあったの?」
「……実は、好きなあかりちゃんが中学時代にいじめられてたって話を聞いて……それが夢に出てきちゃって、なんだか悲しくて」
僕が掠れた声で答えると、母は呆れたように溜息をついた。
「そんなの、考えすぎよ。いつまで引きずってるの。早くご飯食べて学校へ行きなさい」
母の言葉は正論だが、今の僕には冷たく響いた。食卓を飛び出し、制服を着込むと、僕は居ても立ってもいられず家を飛び出した。泣きじゃくりながら、あかりの家を目指して無我夢中で駆ける。
あかりの家の玄関に辿り着くと、僕は荒々しくドアを叩いた。
「あかり……あかり!」
数回繰り返すと、ゆっくりとドアが開いた。寝ぼけ眼のあかりが、目を丸くして僕を見つめている。
「秋夫君……? どうしたの、そんなに泣いて……」
僕の姿を見るなり、あかりは驚いたように目を見開いた。言葉を繋ごうとしたが、涙で喉が詰まってうまく喋れない。昨夜の夢、拭いきれない不安、そして今朝の母とのやり取り。それらすべてをぶつけるように、僕は泣きながら訴えた。
すると、背後からあかりの母親が顔を出し、状況を察したのか優しく微笑んだ。
「まあ……そんなにあかりのこと、大切に思ってくれているのね。嬉しいわ。さあ、二人で一緒に学校へ行ってらっしゃい」
あかりは少し恥ずかしそうに、でも確かな温もりを持って僕の手を握った。僕たちはそのまま並んで歩き始めた。沈黙が続く中、あかりがふと、小さな声で口を開いた。
「……秋夫君」
「……うん?」
「私もね、同じ夢を見たの。……中学の時のあの場所で、私が一人で泣いていたら、秋夫君が駆けつけてくれる夢。……ずっと、待ってたんだよ」
あかりの言葉に、僕の胸が再び熱く込み上げる。僕たちが共有していたのは、ただの夢ではなかったのかもしれない。皮肉な運命の中に置かれた僕たちが、無意識のうちに惹かれ合い、魂の記憶を同期させていたのだとしたら。
涙を流し、互いの痛みを分かち合いながら、僕たちは朝日の中を学校へと歩いていった。たとえ世界がどれほど皮肉でも、今この瞬間、僕の手の中には確かな温もりがあった。
「秋夫、ご飯だよ! もう起きてるんでしょう? 遅刻しちゃうわよ!」
僕は重い瞼をこすりながら体を起こした。頬にはまだ、昨夜の涙が乾いた痕が残っている。階下に降りると、母は僕の顔を見るなり怪訝そうに眉をひそめた。
「どうしたの、その顔。……何かあったの?」
「……実は、好きなあかりちゃんが中学時代にいじめられてたって話を聞いて……それが夢に出てきちゃって、なんだか悲しくて」
僕が掠れた声で答えると、母は呆れたように溜息をついた。
「そんなの、考えすぎよ。いつまで引きずってるの。早くご飯食べて学校へ行きなさい」
母の言葉は正論だが、今の僕には冷たく響いた。食卓を飛び出し、制服を着込むと、僕は居ても立ってもいられず家を飛び出した。泣きじゃくりながら、あかりの家を目指して無我夢中で駆ける。
あかりの家の玄関に辿り着くと、僕は荒々しくドアを叩いた。
「あかり……あかり!」
数回繰り返すと、ゆっくりとドアが開いた。寝ぼけ眼のあかりが、目を丸くして僕を見つめている。
「秋夫君……? どうしたの、そんなに泣いて……」
僕の姿を見るなり、あかりは驚いたように目を見開いた。言葉を繋ごうとしたが、涙で喉が詰まってうまく喋れない。昨夜の夢、拭いきれない不安、そして今朝の母とのやり取り。それらすべてをぶつけるように、僕は泣きながら訴えた。
すると、背後からあかりの母親が顔を出し、状況を察したのか優しく微笑んだ。
「まあ……そんなにあかりのこと、大切に思ってくれているのね。嬉しいわ。さあ、二人で一緒に学校へ行ってらっしゃい」
あかりは少し恥ずかしそうに、でも確かな温もりを持って僕の手を握った。僕たちはそのまま並んで歩き始めた。沈黙が続く中、あかりがふと、小さな声で口を開いた。
「……秋夫君」
「……うん?」
「私もね、同じ夢を見たの。……中学の時のあの場所で、私が一人で泣いていたら、秋夫君が駆けつけてくれる夢。……ずっと、待ってたんだよ」
あかりの言葉に、僕の胸が再び熱く込み上げる。僕たちが共有していたのは、ただの夢ではなかったのかもしれない。皮肉な運命の中に置かれた僕たちが、無意識のうちに惹かれ合い、魂の記憶を同期させていたのだとしたら。
涙を流し、互いの痛みを分かち合いながら、僕たちは朝日の中を学校へと歩いていった。たとえ世界がどれほど皮肉でも、今この瞬間、僕の手の中には確かな温もりがあった。

