しゃべる人形

結婚式という非日常から、日常の教室へと戻ってきた気だるい朝。上松がいつものようにニヤニヤと笑いながら僕の席に近づいてくる。
「おい、お前ら。今日は抜き打ちでテストやるからな」
「はあ? 結婚式の直後にいきなりって、そんなの聞いてないよ! 勉強する時間なんてあるわけないだろ」
僕が思わず声を上げると、あんなもはるかも、あかりもまさおも、そしてまさしも一様に呆れ顔で不満を漏らした。「えーっ」という不満の声が教室に広がる。しかし、上松はどこ吹く風で肩をすくめた。
「落ち着けよ。この学校のテストは、そんなガリガリ勉強しなくても点数が取れるような簡単なもんだ。だから心配すんなって」
そこへ、部長の佐藤先生が穏やかな足取りで入ってきた。先生は教壇に立つと、僕たちの不安を察したのか、優しく微笑みながら口を開いた。
「上松くんの言う通りですよ。この学校のテストは、あくまで知識を確認するためのものです。それに、普段から問題を起こさず真面目に通っていれば、留年なんて心配はいりません。安心して受けてください」
「ほらな、言っただろ。これでみんなほっとしただろう」
上松が勝ち誇ったようにみんなを見渡す。張り詰めていた教室の空気が、ふっと緩んだ。それから、国語、社会、そして音楽。僕たちは淡々と、しかしどこか少しだけ安堵した気持ちで、それぞれのテスト用紙に向き合うことになった。