しゃべる人形

まさしが本当にスタッフの元へ突っ込んでいった時は、みんなで「おいおい、正気かよ」と頭を抱えた。しかし、フジテレビのスタッフたちは驚いたものの、なぜかその勢いに押されたのか、あろうことか「ちょうど今、握手会のシーンを撮るから、そこに出てみれば?」とまさかの提案をしたのだ。
「うおおお! やったー!」
まさしはあの大柄な体をこれでもかと弾ませてジャンプした。
「おいまさし、お前の体重でその舞台に乗ったら床が抜けるぞ!」と雅男たちが必死に止めるのも聞かず、まさしは舞台へと飛び出した。何事かと警備員が駆けつけてくるが、まさしとドラマの女の子の間に流れるあまりに直球でピュアな空気に、現場全体が不思議と静まり返った。
まさしは堂々と、しかし顔を真っ赤にして言った。
「テレビでずっと見てて、前からあんたのことが大好きなんだ!」
まさかの公開告白。会場中がどよめく中、まさしはそのまま勢いに任せて尋ねた。
「桜坂高校って知ってるか? 俺、そこに通ってるまさしって言うんだ。もしよかったら、俺と付き合ってくれないか!」
強引で、不器用で、でも一点の曇りもない真っ直ぐな言葉。その女の子は一瞬驚いた顔をしたが、まさしの瞳の奥にある真剣さを感じ取ったのか、少し照れながら小さく頷いた。
「……桜坂高校、知ってます。まさし君、よろしくお願いします」
まさしが彼女の手をガシッと掴んだ瞬間、周囲からは呆れと感動が入り混じったような歓声と拍手が沸き起こった。佐藤先生が「……まったく、破天荒な生徒たちね」と呆れながらも、少しだけ口角を上げていたのが見えた。
まさしは誇らしげに僕たちの方を向いて親指を立てた。今日という日は、上松先生の結婚式から始まり、まさしのドラマチックな恋の成就まで、桜坂高校の僕たちにとって忘れられない一日になった。