しゃべる人形

教室に戻った僕は、息を切らしながらみんなの注目を集めた。
「あのさ、佐藤先生に呼ばれた理由なんだけど……」
上松先生(いえ、クラスメイトたちですね)が、心配そうに僕を覗き込む。
「おい秋夫、また佐藤に怒られたんじゃないのか?」
「いや、違うんだよ!」
僕は大きく首を振って、理科室での出来事を話し始めた。
「佐藤先生が突然、結婚式の話を切り出したんだ。上松先生とお母さんの結婚式を、今度の日曜日にやることになったんだって」
教室がざわめく中、僕は詳細を続けた。
「場所は千葉市のプリンスホテルだって。でも、朝がめちゃくちゃ早いんだ。5時1分の京葉快速に乗らないと、東京まで直通で行けなくて乗り換えが必要になるからって……みんなで朝5時1分の電車に乗って行くことになったんだよ」
突然の報告に、みんなは目を丸くした。そこへ上松先生がやってきて、気まずそうに頭をかいた。
「……ああ、みんな。黙っていて本当に悪かった。実は近々みんなに報告しようと思っていたんだ」
それを聞いた瞬間、あんなやはるか、雅男や正志たちが、呆れ顔で声を揃えた。
「おいおい、このクソ変態先生が本当にお父さんになるのかよ!」
「まったく、変なところで照れやがって!」
みんなはそう言って笑い飛ばしたが、次の瞬間には一斉に温かい表情に変わった。
「でもさ、先生おめでとう! 私たち、全力で祝福するよ!」
「あかりの気持ちを一番わかってる先生だし、最高のお父さんになるよ。頑張って!」
教室中に割れんばかりの拍手が響き渡った。理科室で決まった唐突なプランと、みんなの祝福。給食の時間は、まるで昨日までとは違う、新しい門出を祝うパーティーのような温かい空気の中で終わった。
次の日曜日の朝、5時1分の電車。僕たちはまだ見ぬ未来へ向かって、少し早起きをすることになりそうだ。