「秋夫さん、休み時間に理科室に来なさい。……アンカーとして走るのよ」
突然の校内放送で佐藤先生に呼び出された。心臓が跳ねる。なんだよ、なんで俺が、と苛立ちながら職員室の近くを通ると、上松先生が「何かやらかしたのか?」と心配そうに声をかけてきた。
「授業中にドラマの話をして……たぶん、そのせいです」
「ああ、あの佐藤先生か。うっせえ先生だけど、まあ行ってきなよ」
上松先生の言葉に背中を押され、僕は重い足取りで理科室へ向かった。ドアをノックする。
「どうぞ」
中に入ると、授業の時の氷のような表情とはまるで違う、佐藤先生の穏やかな笑顔があった。拍子抜けして腰掛けると、彼女は意外な言葉を口にした。
「あかりちゃんのことが好きなのよね?」
一瞬、言葉に詰まった。先生はにこにこと笑いながら続ける。
「さっき怒ったのは、あくまで授業中にドラマの話をしたからよ。あのサバ缶の話。でも、ちゃんと理由を分かって呼び出しに応じたから、落第なんてさせないわ。安心なさい」
先生の口から語られるのは、意外なほどの理解だった。先生は、あかりが知的障害を抱えていること、そして上松先生があかりの母親と再婚した家庭の事情を、部長という立場からずっと見守っていたのだという。
「上松先生があかりちゃんの父親になること……部長としてはルールの上でどうしたものかと思ったけれど、今となっては許可してあげて本当によかったと思っているわ」
先生は急に事務的な、でもどこか温かいトーンに切り替わった。
「そうそう、二人の結婚式の人事についてなんだけどね。次の日曜日、日がいいからあそこでやろうと思っているの。技術的なことや時間の兼ね合いも考えて……」
突然決まった日曜日の結婚式の話。佐藤先生の口から飛び出した、僕たちに関わる未来の予定。怒られると思っていたのに、理科室の空気は不思議と柔らかく、僕は佐藤先生という人の本当の姿に触れたような気がした。嬉しいような、少しこそばゆいような思いを抱えて、僕は理科室を後にした。
突然の校内放送で佐藤先生に呼び出された。心臓が跳ねる。なんだよ、なんで俺が、と苛立ちながら職員室の近くを通ると、上松先生が「何かやらかしたのか?」と心配そうに声をかけてきた。
「授業中にドラマの話をして……たぶん、そのせいです」
「ああ、あの佐藤先生か。うっせえ先生だけど、まあ行ってきなよ」
上松先生の言葉に背中を押され、僕は重い足取りで理科室へ向かった。ドアをノックする。
「どうぞ」
中に入ると、授業の時の氷のような表情とはまるで違う、佐藤先生の穏やかな笑顔があった。拍子抜けして腰掛けると、彼女は意外な言葉を口にした。
「あかりちゃんのことが好きなのよね?」
一瞬、言葉に詰まった。先生はにこにこと笑いながら続ける。
「さっき怒ったのは、あくまで授業中にドラマの話をしたからよ。あのサバ缶の話。でも、ちゃんと理由を分かって呼び出しに応じたから、落第なんてさせないわ。安心なさい」
先生の口から語られるのは、意外なほどの理解だった。先生は、あかりが知的障害を抱えていること、そして上松先生があかりの母親と再婚した家庭の事情を、部長という立場からずっと見守っていたのだという。
「上松先生があかりちゃんの父親になること……部長としてはルールの上でどうしたものかと思ったけれど、今となっては許可してあげて本当によかったと思っているわ」
先生は急に事務的な、でもどこか温かいトーンに切り替わった。
「そうそう、二人の結婚式の人事についてなんだけどね。次の日曜日、日がいいからあそこでやろうと思っているの。技術的なことや時間の兼ね合いも考えて……」
突然決まった日曜日の結婚式の話。佐藤先生の口から飛び出した、僕たちに関わる未来の予定。怒られると思っていたのに、理科室の空気は不思議と柔らかく、僕は佐藤先生という人の本当の姿に触れたような気がした。嬉しいような、少しこそばゆいような思いを抱えて、僕は理科室を後にした。

