しゃべる人形

国語の時間が終わり、2時間目は理科、物理の授業だった。教室の空気が一瞬で張り詰める。この学校で最も恐れられている佐藤先生の登場だ。彼女はこの学校の教頭のような立場にあり、誰が留年し、誰が進級するかという運命を握る絶対的な権力者だった。けれど、その授業は驚くほど明快で、複雑な物理現象を誰にでもわかる単純な理屈で解き明かす名講師でもあった。
「授業を始めます」
佐藤先生が教壇に立つと、クラス委員の正が「着席」と号令をかけた。
「今日の授業は、飛行機を飛ばします」
佐藤先生の言葉に、僕は思わず「飛行機って、どうやって飛ばすんだよ」と声に出してしまった。正が隣で「まあまあ、落ち着けよ」と僕をなだめる。一方、はるかやあんなは机の上に置かれた割り箸やプロペラを見て、「あ、これ見たことある!」と指差した。
「あれ……もしかして、なんとかの法則だっけ? 何の法則だっけ」
僕は頭を抱えた。ああ、思い出せない。また宿題地獄か。調べてこいなんて言われるのは嫌だなとぼやいていると、佐藤先生が涼しい顔で言った。
「今調べるならスマートフォンがあるでしょう? AIに聞けばいいじゃない。……それが今日の宿題ですよ」
授業が始まり、僕たちは校庭に出て、割り箸で作った飛行機を実際に飛ばした。風に乗って舞う飛行機を見ながら、みんなで「何の法則か」という宿題についてボヤく。
「めんどくさいなあ」と、はるかもあんなも正も雅男も、みんなで声を揃えた。
僕はため息をつきながら言った。「まあ、いいや。AIに聞いてみるよ」
するとあかりが不安そうな顔をしたので、僕は優しく笑いかけた。「あかり、大丈夫だよ。俺がAIに聞けばいいんだから」
その瞬間、みんなから「はあ、このバカカップルめが!」と一斉にツッコミが入り、校庭に大きな笑い声が響いた。物理の難問も、みんなで笑い飛ばしてしまえば、少しだけ解きやすい宿題に思えた。