しゃべる人形

あんなは肩を震わせて泣いていた。彼女が抱えてきた過去の痛み、誰にも言えなかった孤独。それが溢れ出し、止まらなくなっていた。
「あんなの気持ち、私ならわかるよ」
あかりは静かにそう言うと、あんなの隣に座った。あかりは、自分が中学時代に受けた仕打ちを語り始めた。上履きを隠され、大事にしていた人形を教室に持ってきただけで馬鹿にされ、笑われたこと。あかりが言葉を紡ぐたび、二人の間にあった見えない壁が崩れていく。あんなとあかりは、ただ寄り添って泣きあった。言葉にはできない痛みを、涙で分かち合っていた。
そこへ、ふらりと上松先生がやってきた。二人の様子に気づいた上松先生は、周囲を見回してから穏やかな声で言った。
「お、今日はあれだな。ちょっとした学級会、話し合いの時間にしようか」
その言葉に、教室の空気が変わった。自然と集まった仲間たちの間で、どうすればいじめをなくせるか、どうすれば誰もが傷つかずに済むかというテーマで話し合いが始まった。
正は、じっとあかりの言葉に耳を傾けていた。あかりは、以前までは自分の思いを言葉にすることが難しかったはずだ。けれど、今は違う。
「あかり、前までは話すのが大変だったのに、自分の気持ちをちゃんと伝えられるようになったんだな。本当に良かったよ」
正がそう言って微笑むと、その場にいた全員から自然と拍手が湧き起こった。あかりの成長と、二人の絆を称えるような温かい拍手が、教室いっぱいに広がっていった。