僕は涙で視界を滲ませながら、あんなにすべてを吐き出した。喉の奥にこびりついていた塊が、言葉になるたびに溶けていく。男たちへの抗いがたい嫌悪感、そして彼らから切り離された「親切」という純粋な粒子だけをすくい取りたいという、渇いた欲望。あかり、しおりちゃん、はるか、そしてあかりのお母さん。僕が手元に封じ込めてきた無数の優しい記憶について。
そして、高校時代、あんなにまで同じことをしていたという事実を打ち明けた瞬間、彼女は驚くことも、軽蔑することもなく、ただ静かに記憶の糸をたぐり寄せた。
「そういえば……卒業前に、秋生君はいつも私たちの気配をどこかへ持ち帰ろうとしていたね。みんなが不思議に思っていたけれど、今ようやく分かったよ。それが君にとっての『避難所』だったんだね」
あんなは穏やかに微笑んだが、その瞳の奥にはカウンセラーとしての冷静な光が宿っていた。僕は彼女が次に何を言うのか、恐怖と期待が混ざったような思いで待ちわびる。薄々感づいてはいたのだ。あんなが僕に突きつけようとしているのは、単なる肯定でも否定でもない、もっと厳しい……けれど必要な問いかけであることを。
「秋生君、君がこれまで集めてきた『親切』は、確かに本物だったかもしれない。でもね、それを容器に閉じ込めてしまえば、それはもう過去の化石になってしまう。あかりやしおりちゃん、そして私たちが今、目の前で笑ったり泣いたりしている『今の私たち』は、その容器の中にはいないのよ」
あんなは、僕のポケットに忍ばせた容器を指差した。
「私が今日ここに来たのは、カウンセラーとして君の過去を整理するためじゃない。君がその容器を置いて、もう一度、私たちという『生身の人間』と向き合う約束をするためなんだ。……秋生君、君はいつまで、思い出という名の標本に囲まれて生きるつもり?」
彼女の問いかけは、僕の心臓を静かに打ち抜いた。標本。その言葉が、残酷なまでに今の僕の生活を言い当てていた。あんなは僕を傷つけようとしているのではない。この閉鎖された「聖域」という名の檻から、僕を連れ出そうとしているのだ。
僕はあかりの方を見た。あかりもまた、あんなの言葉を理解しているのか、少しだけ悲しげに、しかし力強く僕の目を見つめ返した。あんなが言いたかったこと。それは、僕が人形に求めていた「永遠の静寂」を捨てて、壊れやすく、失いやすい「生きた時間」の中へ踏み出せ、という残酷なまでの慈悲だった。
そして、高校時代、あんなにまで同じことをしていたという事実を打ち明けた瞬間、彼女は驚くことも、軽蔑することもなく、ただ静かに記憶の糸をたぐり寄せた。
「そういえば……卒業前に、秋生君はいつも私たちの気配をどこかへ持ち帰ろうとしていたね。みんなが不思議に思っていたけれど、今ようやく分かったよ。それが君にとっての『避難所』だったんだね」
あんなは穏やかに微笑んだが、その瞳の奥にはカウンセラーとしての冷静な光が宿っていた。僕は彼女が次に何を言うのか、恐怖と期待が混ざったような思いで待ちわびる。薄々感づいてはいたのだ。あんなが僕に突きつけようとしているのは、単なる肯定でも否定でもない、もっと厳しい……けれど必要な問いかけであることを。
「秋生君、君がこれまで集めてきた『親切』は、確かに本物だったかもしれない。でもね、それを容器に閉じ込めてしまえば、それはもう過去の化石になってしまう。あかりやしおりちゃん、そして私たちが今、目の前で笑ったり泣いたりしている『今の私たち』は、その容器の中にはいないのよ」
あんなは、僕のポケットに忍ばせた容器を指差した。
「私が今日ここに来たのは、カウンセラーとして君の過去を整理するためじゃない。君がその容器を置いて、もう一度、私たちという『生身の人間』と向き合う約束をするためなんだ。……秋生君、君はいつまで、思い出という名の標本に囲まれて生きるつもり?」
彼女の問いかけは、僕の心臓を静かに打ち抜いた。標本。その言葉が、残酷なまでに今の僕の生活を言い当てていた。あんなは僕を傷つけようとしているのではない。この閉鎖された「聖域」という名の檻から、僕を連れ出そうとしているのだ。
僕はあかりの方を見た。あかりもまた、あんなの言葉を理解しているのか、少しだけ悲しげに、しかし力強く僕の目を見つめ返した。あんなが言いたかったこと。それは、僕が人形に求めていた「永遠の静寂」を捨てて、壊れやすく、失いやすい「生きた時間」の中へ踏み出せ、という残酷なまでの慈悲だった。

