桜坂を下りきったところにある小さな公園には、錆びついたブランコがあった。あかりと僕は、並んでそのブランコに腰を下ろした。ギシギシと音を立てる鎖が、どこか懐かしい。
「ねえ、秋夫くん。せっかく桜の時期だし、こういう時は大原櫻子の『ひらり』を歌おうよ」
あかりがそう言って、少しだけはにかんだ。僕たちは声を合わせる。桜の花びらが風に舞う中、僕たちの歌声が公園の静けさに溶け込んでいく。
「ひらり、舞い散る花びら……」
二人のリズムが重なる。まるで、さっきまで音楽室で奏でていたあの『Sign』の続きのように、僕たちの心はひとつになっていた。そんな幸せな時間に浸っていると、ふと後ろから声をかけられた。
「まあ、二人とも仲が良いこと。見ていて微笑ましいわね」
振り返ると、近所に住むおばさんが買い物帰りに立ち止まっていた。僕たちは照れくさそうに笑う。このおばさんは、この町で一番あかりの家族のことを知っている人だった。
おばさんは優しい目で僕たちを見つめると、あかりの隣にそっと座った。
「あかりちゃん、本当に大きくなったわね……」
おばさんは、あかりがまだ小さかった頃の話をポツリポツリと語り始めた。あかりのお父さんが姿を消してしまい、お母さんが一人で懸命に育てていたあの頃。このおばさんは、母子家庭だったあかりの家を何度も訪れ、食事を作ったり、忙しいお母さんの代わりに幼いあかりの面倒を見たりして、ずっと支えてきた人だった。
あかりはその話を、少し寂しそうに、でもどこか安心したような顔で聞いていた。
「私、あの頃はお母さんを困らせてばかりだったから……おばちゃんがいてくれて、本当に助かったんだよ」
そう言ったあかりの手を、僕はブランコの下でそっと握った。おばさんの前では少し照れくさかったけれど、あかりの過去を知り、今の彼女を形作った人たちに会えたことが、なんだかとても嬉しかった。
桜の木漏れ日が、ブランコに揺れる僕たちと、温かいおばさんを優しく包み込んでいた。ここは確かに寂れた田舎町かもしれないけれど、そこには誰にも邪魔されない、確かな温もりが流れていた。
「ねえ、秋夫くん。せっかく桜の時期だし、こういう時は大原櫻子の『ひらり』を歌おうよ」
あかりがそう言って、少しだけはにかんだ。僕たちは声を合わせる。桜の花びらが風に舞う中、僕たちの歌声が公園の静けさに溶け込んでいく。
「ひらり、舞い散る花びら……」
二人のリズムが重なる。まるで、さっきまで音楽室で奏でていたあの『Sign』の続きのように、僕たちの心はひとつになっていた。そんな幸せな時間に浸っていると、ふと後ろから声をかけられた。
「まあ、二人とも仲が良いこと。見ていて微笑ましいわね」
振り返ると、近所に住むおばさんが買い物帰りに立ち止まっていた。僕たちは照れくさそうに笑う。このおばさんは、この町で一番あかりの家族のことを知っている人だった。
おばさんは優しい目で僕たちを見つめると、あかりの隣にそっと座った。
「あかりちゃん、本当に大きくなったわね……」
おばさんは、あかりがまだ小さかった頃の話をポツリポツリと語り始めた。あかりのお父さんが姿を消してしまい、お母さんが一人で懸命に育てていたあの頃。このおばさんは、母子家庭だったあかりの家を何度も訪れ、食事を作ったり、忙しいお母さんの代わりに幼いあかりの面倒を見たりして、ずっと支えてきた人だった。
あかりはその話を、少し寂しそうに、でもどこか安心したような顔で聞いていた。
「私、あの頃はお母さんを困らせてばかりだったから……おばちゃんがいてくれて、本当に助かったんだよ」
そう言ったあかりの手を、僕はブランコの下でそっと握った。おばさんの前では少し照れくさかったけれど、あかりの過去を知り、今の彼女を形作った人たちに会えたことが、なんだかとても嬉しかった。
桜の木漏れ日が、ブランコに揺れる僕たちと、温かいおばさんを優しく包み込んでいた。ここは確かに寂れた田舎町かもしれないけれど、そこには誰にも邪魔されない、確かな温もりが流れていた。

