家路へと続く道の両側には、いくつもの住宅が並んでいた。窓からは温かなオレンジ色の明かりが漏れ、夕食の匂いや、誰かの笑い声がかすかに漂ってくる。それは、「帰る場所がある」という、世界で一番当たり前で、そして一番贅沢な証明だ。
あかりがふと、その明かりを見つめて立ち止まった。彼女の瞳には、夜の帳を映したような寂しさが一瞬だけよぎる。
「秋生」
「ん?」
「あの窓の明かり、きれいだね。……ねえ、知ってる? 世の中にはね、私たちが『頭が悪い』とか『障害がある』って指さされている間に、自分たちが帰る場所すら失くして、どこへも行けずに震えている子たちがいるのよ」
彼女の言葉に、僕はハッとした。
僕たちを「かわいそうな人たち」だと見下す大人の目には、決して見えない現実だ。僕たちは確かに、人より理解するのが遅いかもしれないし、うまく話せないこともある。でも、僕たちには帰る場所がある。あかりを愛し、僕を待っていてくれる場所がある。
「……そうだね」と、僕は彼女の手を握りしめた。
「世間は僕たちのことを『障害があるから大変だ』なんて言うけれど、本当は僕たちの方が、ずっと多くのものを持っているのかもしれないな。だって僕たちには、ちゃんと『ただいま』を言える場所があるんだから」
あかりは、少しだけ不思議そうな顔をして僕を見た。
「秋生、私たちって、そんなに恵まれているのかな?」
「ああ、そうだよ。だって、あかりが僕の隣にいて、僕がこうしてあかりの温かい手を感じている。この場所が僕の帰る場所で、僕の心はあかりという明かりで照らされているんだから」
あかりは照れくさそうに笑い、僕の腕にぎゅっとしがみついた。
「ずるいよ、秋生。そんなこと言われたら、私、もっともっと秋生のことが好きになっちゃうじゃない」
僕たちは歩き出す。
自分たちの障害なんて、この確かな温もりの中では、ちっぽけな模様のひとつに過ぎない。僕たちは、帰る場所があるという幸せを、ちゃんと知っている。そして、本当の孤独という牢獄に閉じ込められているのは、もしかしたら「普通」という顔をして歩いている、あの誰かの方なのかもしれない。
街灯が一つ、僕たちの前を照らす。
帰るべき場所があるという約束の光が、僕たちの背中を優しく押していた。
あかりがふと、その明かりを見つめて立ち止まった。彼女の瞳には、夜の帳を映したような寂しさが一瞬だけよぎる。
「秋生」
「ん?」
「あの窓の明かり、きれいだね。……ねえ、知ってる? 世の中にはね、私たちが『頭が悪い』とか『障害がある』って指さされている間に、自分たちが帰る場所すら失くして、どこへも行けずに震えている子たちがいるのよ」
彼女の言葉に、僕はハッとした。
僕たちを「かわいそうな人たち」だと見下す大人の目には、決して見えない現実だ。僕たちは確かに、人より理解するのが遅いかもしれないし、うまく話せないこともある。でも、僕たちには帰る場所がある。あかりを愛し、僕を待っていてくれる場所がある。
「……そうだね」と、僕は彼女の手を握りしめた。
「世間は僕たちのことを『障害があるから大変だ』なんて言うけれど、本当は僕たちの方が、ずっと多くのものを持っているのかもしれないな。だって僕たちには、ちゃんと『ただいま』を言える場所があるんだから」
あかりは、少しだけ不思議そうな顔をして僕を見た。
「秋生、私たちって、そんなに恵まれているのかな?」
「ああ、そうだよ。だって、あかりが僕の隣にいて、僕がこうしてあかりの温かい手を感じている。この場所が僕の帰る場所で、僕の心はあかりという明かりで照らされているんだから」
あかりは照れくさそうに笑い、僕の腕にぎゅっとしがみついた。
「ずるいよ、秋生。そんなこと言われたら、私、もっともっと秋生のことが好きになっちゃうじゃない」
僕たちは歩き出す。
自分たちの障害なんて、この確かな温もりの中では、ちっぽけな模様のひとつに過ぎない。僕たちは、帰る場所があるという幸せを、ちゃんと知っている。そして、本当の孤独という牢獄に閉じ込められているのは、もしかしたら「普通」という顔をして歩いている、あの誰かの方なのかもしれない。
街灯が一つ、僕たちの前を照らす。
帰るべき場所があるという約束の光が、僕たちの背中を優しく押していた。

