翌日、地下の病院食堂であかりと向かい合った。余震の続く世界の外側で、あかりは「病院は大丈夫だった」と、静かに微笑んだ。その時はまだ、運命の宣告が待ち受けているとは知る由もなかった。
帰路に立たされた僕たちに、医師から告げられたのは絶望だった。「あと数ヶ月」。骨髄ドナーは見つからず、移植という唯一の希望は閉ざされた。しかし、医師は僕の狂気にも似た愛情を汲み取ったのか、異例の許可を出した。「毎日面会に来ていい。君は、ここに泊まっていい」。
迷うはずがなかった。僕はその日から、あかりの無菌室を僕の新たな世界とした。
朝も昼も夜も、地下の売店で買った同じサンドイッチとコーヒーを並べて食べる。あかりが呆れたように「また毎日それなの?」と笑うたび、僕は「これが一番好きなんだ」と答えた。それはただの食事ではなく、あかりと生きるために必要な儀式だった。
医師や看護師が去った隙を縫って、僕はあかりの唇を重ねた。無菌室という死に最も近い場所で、僕たちは最も生に近い熱を交わした。
そして、あかりの体を洗う時。僕は看護師の介助を拒んだ。あかりの肌に触れ、彼女のすべての傷跡、衰えていく身体の線の一つひとつを、僕の手で洗い流す。無菌室の静寂の中、看護師たちはあえて踏み込んでこなかった。そこは、もう僕とあかりだけの、誰にも汚されない聖域だった。
あかりの肌をなぞるたび、彼女の体温が僕に乗り移る。外の世界が震災で崩れ落ちようとも、この無菌室の中だけは、僕とあかりの愛が永遠のように停滞していた。どんなに短く、残酷な残り時間だとしても、この地下で過ごした夜の時間は、僕にとって何物にも代えがたい幸福の形だった。
帰路に立たされた僕たちに、医師から告げられたのは絶望だった。「あと数ヶ月」。骨髄ドナーは見つからず、移植という唯一の希望は閉ざされた。しかし、医師は僕の狂気にも似た愛情を汲み取ったのか、異例の許可を出した。「毎日面会に来ていい。君は、ここに泊まっていい」。
迷うはずがなかった。僕はその日から、あかりの無菌室を僕の新たな世界とした。
朝も昼も夜も、地下の売店で買った同じサンドイッチとコーヒーを並べて食べる。あかりが呆れたように「また毎日それなの?」と笑うたび、僕は「これが一番好きなんだ」と答えた。それはただの食事ではなく、あかりと生きるために必要な儀式だった。
医師や看護師が去った隙を縫って、僕はあかりの唇を重ねた。無菌室という死に最も近い場所で、僕たちは最も生に近い熱を交わした。
そして、あかりの体を洗う時。僕は看護師の介助を拒んだ。あかりの肌に触れ、彼女のすべての傷跡、衰えていく身体の線の一つひとつを、僕の手で洗い流す。無菌室の静寂の中、看護師たちはあえて踏み込んでこなかった。そこは、もう僕とあかりだけの、誰にも汚されない聖域だった。
あかりの肌をなぞるたび、彼女の体温が僕に乗り移る。外の世界が震災で崩れ落ちようとも、この無菌室の中だけは、僕とあかりの愛が永遠のように停滞していた。どんなに短く、残酷な残り時間だとしても、この地下で過ごした夜の時間は、僕にとって何物にも代えがたい幸福の形だった。

