しゃべる人形

医師や看護師たちの制止を振り切り、僕は地下の無菌室へと辿り着いた。
そこは病院というよりは、どこか奇妙な一軒家のような佇まいだった。冷たいコンクリートの奥に、不釣り合いな玄関があり、中には畳が敷かれている。無菌という死に近い環境に、あかりの生活の匂いを少しでも残そうとしたのか、あるいは病院側の罪悪感の現れか。
僕はその畳の上に座り込み、ここで泊まりたいと懇願した。あかりと離れることなど考えられなかった。しかし、現実の壁は厚く、願いは拒絶された。
医師や、藤田ニコルに似た看護師が僕を取り囲む。彼らの前で、僕はあかりへの執着を、壊れた心のように露わにした。何度も何度も、言葉にならない熱情が込み上げる。あかりの手を掴み、その肌に触れ、離れたくないと叫ぶ僕の姿は、彼らの目にどう映ったのだろうか。
「ここから出してくれ」「僕もここにいさせてくれ」
泣き叫び、懇願し、床を這いつくばる。僕の衝動は、無菌室という張り詰めた空気の中では異物そのものだった。あかりの無事を祈るのではなく、ただあかりと一つでありたいという、どうしようもなく身勝手で、しかし抗えない本能。
看護師たちは、僕の異常な言動を止めようとしながらも、その瞳の奥には困惑と、そして僕たちの関係に対する言葉にできない感情を浮かべていた。地下の冷えた空気の中、僕はあかりという存在なしでは形を保てない自分を、ただひたすらに曝け出し続けた。