しゃべる人形

僕とあかりは、たった一つの命の繋がりよりも、もっと深くて脆い「二人だけの時間」を共有することを選んだ。もしもあかりがいなくなってしまったら、残された子供を不幸にしてしまうかもしれない。そんな恐れから、僕たちは子供を作らないという選択をした。
世間が子作りこそが愛の成就だと決めつける中、僕たちは別の場所で満足を見出していた。僕のあそこをあかりが触れ、あかりのあそこを僕が満たす。その反復の中で、僕たちは世界から切り離された二人だけの宇宙を完成させていた。
「子供がいないことは、果たして不幸なのか」
「満足とは、ただ子を成すためにセックスをすることなのか」
僕がこの物語を通して問いたいのは、まさにその一点だ。社会が押し付ける「幸福のテンプレート」に当てはまらない、ただ互いの肌の熱と、交わる瞬間の震えだけで完結する愛の形。子供という未来を放棄し、現在(いま)という快楽に全霊を賭けることは、本当に不完全なことなのだろうか。
欲望の果てに何もないことが、あるいは最高に贅沢な充足であるかもしれない。僕とあかりが辿り着いたその場所には、誰にも邪魔されない、純粋で残酷な幸福が横たわっている。