各駅停車だけが、栄や歌舞伎町、そして吉原へと向かう。その不可解な運行ルートには、かつて風俗の街を闊歩した遊び人であり、一時はその筋の組織に身を置いていた上松という男の影があった。上松という男は、表向きは崇められるほど偉い立場にありながら、その実、己の欲望の赴くままに街を渡り歩いた過去を持つ。彼がかつて愛した街、彼が根城にしていた夜の社交場を繋ぐために、各駅停車の線路は引かれたのだ。上松の気まぐれとも執念ともつかない記憶が、今もなお、鈍行列車となって夜の街を往復し続けている。
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