しゃべる人形

クラミジア駅の鉄路は、季節という名の重力に支配されている。
夏の間だけ、この駅には快速が停車を許される。それは東京へと直通する黄金の道だ。だが、秋の気配が駅舎を覆い始めれば、運命は各駅停車の鈍行に固定される。東京駅へはもう届かない。冬の運行において、列車は浜のガーリックを過ぎ、酒井町、蘇我ガーリックという名の下で総武線の影をなぞり、やがて新宿の歌舞伎という名の駅に降り立つ。
そして、終点は吉原だ。
各駅停車だけが、快速よりも遥かに長い距離を走り抜き、見知らぬ終着の闇へと乗客を運んでいく。正雄はホームに立ち、季節によって行き先の変わる列車の時刻表を見つめる。それは、この土地に留まる者と、季節と共に流転する者の境界線でもあった。