しゃべる人形

あの赤い電車の正体が、かつて家にあった高田富美作の、あの禍々しい乗り物だったとは……。
あれはジェットコースターのように座席があるだけで、シートベルトなど存在しない。だが、背後には異様な速さで回転するプロペラがついていた。スピードを上げれば上げるほどプロペラは唸りを上げ、発生する強烈な風がモーメントの法則となって、乗っている者を座席から強制的に吹き飛ばす。
あの時、踏切の向こうで赤い車両が通り過ぎた時、そこに垣間見た地獄の仕組みが理解できた。もしプロペラの風で吹き飛ばされず、シートにしがみついていた者がいたとしても、その先にはさらに恐ろしい「ガス室」が待っているというのか。
そして、この悍ましい殺戮マシンの操縦席に、あの世へ行ったはずの婆さんが座っている。
「兄ちゃん、そんなラジコンやってるのもいいけど、たまには勉強しな」
かつて浜のガリックへ向かう道中、婆さんが畑の中をその乗り物で疾走し、俺を轢きそうになりながら放ったあの言葉が耳に残る。あの時の遊び道具が、婆さんの死後の執念と、高田富美の設計図によって、これほどまで凶悪な兵器に変貌していたとは。
高田富美のエンジンだけでは、人を殺めるほどのパワーは出ないはずだった。だが、そこには「神谷のエンジン」が組み合わされていた。婆さんは、地獄へ逝く前にその二つのエンジンを融合させていたのだ。
高田富美のエンジンはプロペラを限界まで回して暴風を生み出し、神谷のエンジンはその重厚な車体を地獄の果てまで突き動かす出力を提供する。婆さんの冷酷な意志が、その二基のエンジンを一つに繋ぎ合わせ、あのいじめっ子たちを逃げ場のない死のコースへと誘い込んでいたのだ。
バックミラー越しに、俺はあの赤い車体の残像を追う。それはもはや電車ではなく、婆さんが作り上げた、逃げ場のない「処刑場」そのものだった。