しゃべる人形

遊園地の空気が一変した。突如として周囲の光が沈み、寒気を感じるほどの霊気が立ち込める。そこに現れたのは、俺の家の庭に埋葬されているはずの、死んだ婆さんの姿だった。
生前と同じ、いや、それ以上に鋭く冷たい剣幕。婆さんの亡霊は、俺たちの動揺をよそに、憎々しげに言い放った。
「またあいつらか。あの明かりをいじめる連中……地獄の底からずっと見ていたよ」
婆さんの視線は、つい先ほどまさしと福本りこに追い払われた連中の逃げ去った方角を向いていた。だが、彼女が警告しに来たのは、過去の因縁だけではなかった。
「……帰り道、あの踏切だけは絶対に見るなよ」
その声は命令のように響いた。普段、俺たちが生活圏で目にするのは、クラミジア線直通の青とグレーの国鉄型車両だ。しかし、今夜あの踏切を通る電車は違う。
「赤い車両が通る。血に塗られた色の電車だ。あのいじめっ子どもが乗り込んで、地獄へと引きずり込まれる電車さ」
婆さんは冷酷な口調を崩さず、俺たちに告げた。明かりがその光景を直接目にすれば、どれほどの精神的な傷を負うか分からない。ましてや、あんなが抱くマリアにまで、その呪わしい影を落とすわけにはいかない。
「迂回する道はない。あそこを通らねば帰れぬなら、前を見ずにカーテンを閉め切って通り過ぎろ。いいか、決して……決して見てはならんぞ」
80代の老婆が認知症の混濁の中で言い残した言葉のように聞こえるかもしれない。しかし、その瞳には明確な「生者への警告」が宿っていた。
婆さんは霧のように消えた。遊園地の出口へと向かう車中、俺たちは重い沈黙の中で、カーテンをしっかりと閉め切る準備を整えた。あの赤い電車が、俺たちの背後に迫る運命を背負いながら、俺たちは再び遊園地の中へと視線を戻し、帰りの時間を先延ばしにするしかなかった。