歌い終えたあと、店内に漂っていた気まずい空気は、どこか心地よい余韻に変わっていた。上松はグラスに残った氷をカランと鳴らし、しみじみと口を開いた。
「……いい歌だな。Mr.Childrenの『Sign』か。心に響くよ」
俺はジョッキを置き、熱っぽく頷いた。
「いやあ、本当にそうですよ。この歌、学校の音楽の時間でやりたいな。いっそ音楽の教科書に載ってほしいくらいだ」
俺の言葉に、正夫がふっと鼻で笑って肩をすくめた。
「おいおい秋夫、お前な。そんなラブソングが、堅苦しい教科書に載るわけねえだろ」
正夫の冷めたツッコミも、今の俺にはどうでもよかった。俺は真剣な顔で言い返した。
「載るか載らないか、そんなことはどうでもいいんだ。俺は、この歌を音楽の時間にやりたいんだよ」
その一言に、先ほどまで泣き崩れていた上松先生が、教壇に立つときのような、どこか懐かしい鋭い目つきを向けた。
「……わかった。じゃあ、明日学校に行ったら音楽の清水先生に話してみよう。次の授業でこれを取り上げること、俺から掛け合ってやるよ」
俺は驚いて目を見開いた。
「先生、本当にいいんですか?」
「ああ。明日の一時間目、確か音楽だったな。勢いに任せて言ってみるさ」
俺が即座にそう答えると、正夫は呆れたように笑いながらビールを飲み干した。
「……お前、よくそんな細かい時間割まで覚えてんな。本当にあかりのことになると、お前は無敵だな」
深夜の居酒屋。酔いと高揚感に包まれた俺たちは、やがて席を立った。店を出ると、外はひんやりとした夜風が吹いている。明日の朝、どんな顔をして登校すればいいのかも分からぬまま、俺と正夫、そして上松先生は、それぞれの家へと続く闇の中へ別々に歩き出していった。
「……いい歌だな。Mr.Childrenの『Sign』か。心に響くよ」
俺はジョッキを置き、熱っぽく頷いた。
「いやあ、本当にそうですよ。この歌、学校の音楽の時間でやりたいな。いっそ音楽の教科書に載ってほしいくらいだ」
俺の言葉に、正夫がふっと鼻で笑って肩をすくめた。
「おいおい秋夫、お前な。そんなラブソングが、堅苦しい教科書に載るわけねえだろ」
正夫の冷めたツッコミも、今の俺にはどうでもよかった。俺は真剣な顔で言い返した。
「載るか載らないか、そんなことはどうでもいいんだ。俺は、この歌を音楽の時間にやりたいんだよ」
その一言に、先ほどまで泣き崩れていた上松先生が、教壇に立つときのような、どこか懐かしい鋭い目つきを向けた。
「……わかった。じゃあ、明日学校に行ったら音楽の清水先生に話してみよう。次の授業でこれを取り上げること、俺から掛け合ってやるよ」
俺は驚いて目を見開いた。
「先生、本当にいいんですか?」
「ああ。明日の一時間目、確か音楽だったな。勢いに任せて言ってみるさ」
俺が即座にそう答えると、正夫は呆れたように笑いながらビールを飲み干した。
「……お前、よくそんな細かい時間割まで覚えてんな。本当にあかりのことになると、お前は無敵だな」
深夜の居酒屋。酔いと高揚感に包まれた俺たちは、やがて席を立った。店を出ると、外はひんやりとした夜風が吹いている。明日の朝、どんな顔をして登校すればいいのかも分からぬまま、俺と正夫、そして上松先生は、それぞれの家へと続く闇の中へ別々に歩き出していった。

