あかりの提案は、静かなダイニングテーブルに新しい風を吹き込んだ。
「ねえ、今日はお墓参りに行こうよ。遥かちゃんの夢に出てきてくれたお母さんに、ちゃんとお礼を言いたいから」
あかりのお母さんもすぐに頷いた。「それがいいわね。お母様もきっと、今の遥かちゃんを見て安心されるはずよ」
僕たちはすぐに行動を開始した。上松が愛車を出すと言い出し、正志や仲間にハンズフリーで連絡を入れる。あかりの家には車が1台あったが、大人数での移動となれば話は別だ。上松の車も合流させ、この日はさながら「大移動」のような墓参りとなった。
ちょうどその日、あんなが待望の子供を出産して退院したという知らせが入っていた。彼女にも事情はあらかじめ伝わっていた。誰かが遥かの今日という日の意味を話し、あんなも「私も一緒にお参りしたい」と力強く答えてくれたのだ。
理子ちゃんだけは仕事のロケで合流できなかったが、車列は賑やかに、それでいてどこか厳かな空気をまとって出発した。
上松の車には、あんなが抱える赤ちゃんの柔らかい呼吸と、新しい命の鼓動が満ちている。
「……なんか、不思議だね」
遥かが隣でぽつりと呟いた。昨夜は悲しみに泣いていた彼女の顔に、今はどこか晴れやかな色が宿っている。
「お母さんがいなくなって、でも今こうして新しい命が生まれて、みんなが私のために集まってくれてる。……死とお別ればっかりだと思ってたけど、命はこうやって繋がっていくんだね」
墓地に着くと、風がさわやかに木々を揺らした。あんなが赤ちゃんの小さな手を引いて墓前へ進み出る。かつて遥かのお母さんとでっかい猫が語り合っていた場所。そこへ今は、新しい家族の絆が重なっていく。
あんなの子供の産声のような泣き声が、墓地に響いた。それはまるで、遥かのお母さんへ捧げる「誕生の報告」のように聞こえた。
「お母さん、私ね、もう一人じゃないよ」
遥かがお墓に手を合わせると、あかりもその後ろに並んだ。僕たち全員が、遥かという一人の少女を守り、その明日を祝福するためにそこにいた。
親戚たちが欲しがったのは、金や土地といった死んだ数字だった。でも、僕たちが今こうして運んでいるのは、命の温もりだ。この墓地に眠る遥かのお母さんも、きっと微笑んでいるに違いない。
空には雲ひとつない青空が広がっていた。悲しみを共有し、新しい命の喜びを分かち合う。僕たちのこの家族のような繋がりは、どんな理不尽な現実よりも強く、確かに根を張っていた。
「ねえ、今日はお墓参りに行こうよ。遥かちゃんの夢に出てきてくれたお母さんに、ちゃんとお礼を言いたいから」
あかりのお母さんもすぐに頷いた。「それがいいわね。お母様もきっと、今の遥かちゃんを見て安心されるはずよ」
僕たちはすぐに行動を開始した。上松が愛車を出すと言い出し、正志や仲間にハンズフリーで連絡を入れる。あかりの家には車が1台あったが、大人数での移動となれば話は別だ。上松の車も合流させ、この日はさながら「大移動」のような墓参りとなった。
ちょうどその日、あんなが待望の子供を出産して退院したという知らせが入っていた。彼女にも事情はあらかじめ伝わっていた。誰かが遥かの今日という日の意味を話し、あんなも「私も一緒にお参りしたい」と力強く答えてくれたのだ。
理子ちゃんだけは仕事のロケで合流できなかったが、車列は賑やかに、それでいてどこか厳かな空気をまとって出発した。
上松の車には、あんなが抱える赤ちゃんの柔らかい呼吸と、新しい命の鼓動が満ちている。
「……なんか、不思議だね」
遥かが隣でぽつりと呟いた。昨夜は悲しみに泣いていた彼女の顔に、今はどこか晴れやかな色が宿っている。
「お母さんがいなくなって、でも今こうして新しい命が生まれて、みんなが私のために集まってくれてる。……死とお別ればっかりだと思ってたけど、命はこうやって繋がっていくんだね」
墓地に着くと、風がさわやかに木々を揺らした。あんなが赤ちゃんの小さな手を引いて墓前へ進み出る。かつて遥かのお母さんとでっかい猫が語り合っていた場所。そこへ今は、新しい家族の絆が重なっていく。
あんなの子供の産声のような泣き声が、墓地に響いた。それはまるで、遥かのお母さんへ捧げる「誕生の報告」のように聞こえた。
「お母さん、私ね、もう一人じゃないよ」
遥かがお墓に手を合わせると、あかりもその後ろに並んだ。僕たち全員が、遥かという一人の少女を守り、その明日を祝福するためにそこにいた。
親戚たちが欲しがったのは、金や土地といった死んだ数字だった。でも、僕たちが今こうして運んでいるのは、命の温もりだ。この墓地に眠る遥かのお母さんも、きっと微笑んでいるに違いない。
空には雲ひとつない青空が広がっていた。悲しみを共有し、新しい命の喜びを分かち合う。僕たちのこの家族のような繋がりは、どんな理不尽な現実よりも強く、確かに根を張っていた。

