しゃべる人形

あかりは、未来のことまでもうすっかり見通しているかのように、明るい声で語り出した。
「遥かちゃんに素敵な彼氏ができたらさ、その時はあっちの家に住むのもいいよね。もちろん、今のこの家が遥かちゃんの家であることは変わらないけど、新しい家族を築く場所としてさ。うん、それが一番自然で普通のことじゃない?」
あかりは少し照れたように、でも真っ直ぐに僕を見て続けた。
「私だって、いつか秋生くんと一緒になる時は、新しい場所で二人で住むんだから。そうやってみんな、それぞれの幸せを見つけていくんだよ」
その場にいたみんなが、あかりの飾らない言葉に自然と頷いた。ついさっきまで親戚の醜い争いに心を痛めていたのが嘘のように、リビングには穏やかで、未来を慈しむような空気が流れている。
すると、正志がニヤリと笑って、場を和ませるように言った。
「そうだな。でも、遥かにはもったいないくらいのいい奴が現れないとな。……なあ、誰か遥かに紹介できそうな、いい彼氏候補いないか?」
その冗談混じりの問いかけに、理子ちゃんが笑いながら加わる。
「そうよ! 遥かちゃん、これからは私たちみんなで遥かちゃんの幸せも全力でサポートするからね」
みんなが互いの幸せを、まるで自分のことのように心配し、祈り合っている。遥かは少し恥ずかしそうに頬を染めながらも、心から嬉しそうな笑顔を見せた。あかりのお母さんも、そんな僕たちを見て、「若いっていいわね」と優しく微笑んでいる。
僕はその光景を眺めながら、自分が書いている物語のページにこう書き足した。
『――理不尽な喪失の果てに、僕たちは本当の意味での「大人」の優しさを手に入れた。誰かを支配するのではなく、誰かの幸せを願い、そのための居場所を惜しみなく分かち合うこと。あかりの無邪気で力強い提案は、僕たち全員の孤独を追い払い、温かな未来図を描き出していた』
もし遥かに彼氏ができたら、僕たちはみんなで歓迎しよう。そして、あかりと僕も、いつか自分たちの物語を紡ぐ場所を見つけるだろう。
窓の外に広がる夜空には、昨夜よりもずっと高く、眩い星が輝いている。あかりと僕、遥か、そして仲間たち。僕たちの物語は、傷跡さえも抱きしめて、ゆっくりと、しかし確実に、光の方へと進み始めているんだ。