しゃべる人形

その夜、外では冬の冷たい風が窓を叩いていた。12月、街はクリスマスに向けて華やいでいるけれど、僕の部屋の中は、どこよりも温かな「猫の聖域」だった。
でっかい猫である母さんは、僕に自分の背中を枕代わりにされ、「ニャア、ニャア!」と抗議の声を上げている。前足で僕の足を突っついたり、尻尾をバタつかせたりしているけれど、僕はそんなの知らんぷりだ。お腹の上にはチビが丸まっていて、その小さな鼓動が僕の心臓と重なる。
「おい、秋生。そんなに猫を独占するなよ。可哀想だろうが」
親父がリビングから呆れたように声をかけてくるけれど、僕は布団の中深く、猫たちの体温に溶け込んでいた。冬の夜の冷気なんて、ここには一切入り込めない。
でっかい猫が不満げにカチカチと歯ぎしりをする音、あるいは退屈しのぎに畳を爪でカリカリと研ぐ音。それは耳障りな雑音なんかじゃない。僕にとっては、この世界で一番安心できる、魔法の子守唄だった。
僕は目を閉じ、あかりのことを考えた。
彼女も今頃、どこかでこうして誰かの温もりに包まれているだろうか。あるいは、僕との約束を思い出しながら、同じ星空を見上げているだろうか。
猫の温もりが、僕の肌から全身へと染み渡っていく。僕はまるで、母親という名の大きなゆりかごに揺られている赤ん坊のような気分だった。やがて、意識が遠のき、夢の入り口に立ったとき、不思議な光景が広がった。
夢の中で僕は、あかりと並んで雪道を歩いていた。
でも、そこは寒くなかった。あかりが僕の手を握ると、その熱が全身に広がり、周りの雪さえも光り輝く花びらに変わっていく。あかりは笑いながら言った。
「秋生、私たちには帰る場所があるから、もう迷子にはならないね」
僕はうなずき、彼女の隣で歩いた。
目が覚めたとき、部屋はまだ暗く、静まり返っていた。だけど、僕の腹の上にはチビがいて、背中には母さんが寄り添っている。窓の外の12月の冷たさは、僕たちの絆をより一層、固く強くしていた。
僕はそっと、でっかい猫の背中に手を添えた。
「……ありがとう」
口に出さなくても、彼女たちには伝わっているはずだ。僕はもう一度深く息を吸い、愛する人たちと、愛する猫たちに囲まれたこの場所で、もう一度静かな眠りへと落ちていった。明日の朝、どんなに寒くても、僕はまたあかりの元へ歩いて行ける。そんな確かな自信が、僕の胸の中で温かな灯りとなって燃えていた。