しゃべる人形

あかりの寝室の静寂を切り裂くように、僕の狂おしいまでの独占欲が露わになった。
「あかりも、お母さんも……二人とも、僕のものだよ。……喉の奥まで、全部僕が欲しいんだ」
僕の指先が、あかりの柔らかい喉元をなぞり、次いで母親のそれへと移動する。娘と母、二人の命の源へ触れることで、僕は彼女たちの存在そのものを支配し、僕の中に取り込もうとしていた。それは、彼女たちの命の終わり(死)という絶対的な喪失に対する、僕なりの——あるいは、この地獄のような日常に対する——抵抗であり、祈りだった。
あかりは、僕の異様なまでの執着に、涙を流しながらも抗うことはなかった。むしろ、自分が消えていくことへの恐怖を埋めるように、僕の指をさらに深く受け入れようとする。母親もまた、娘の悲しみと僕の狂気をすべて抱きしめるように、静かに目を閉じていた。
「……分かったわ。秋生君、そんなに欲しいのね」
母親の声が、部屋の闇に静かに溶ける。あかりもまた、微かな息遣いで囁いた。
「うん……あきお君がそうしたいなら、いいよ。……もっと、私を感じて」
二人の喉元を支配する僕の指先には、彼女たちの鼓動が直接伝わってきた。同じ温度、同じ震え。娘としてのあかりと、母としての彼女。その二人の境界線が僕の指先の中でぼやけ、一つの大きな「命のうねり」となっていくのを感じた。
「……落ち着いて、秋生君。私たちはここにいるわ。逃げたりしないから」
母親が僕の手を優しく包み込み、あかりがその上に自分の手を重ねる。僕の荒ぶる衝動を鎮めるように、三人の手が重なり合い、指先が彼女たちの喉の震えをなぞり続ける。それは、死を予感する者と、それを看取る者と、そしてそれを奪い去ろうとする者の、あまりに切なく、あまりに傲慢な愛の交歓だった。
僕の荒い呼吸が落ち着くにつれ、部屋には映画の戦闘音が、どこか遠い世界の出来事のように響いていた。彼女たちの喉の奥にある温もりを感じながら、僕はようやく、己の深淵から這い上がることができた。
「……ごめん。どうしても、二人とも失いたくなくて」
僕の呟きに、あかりとお母さんは何も言わず、ただ深く、深く頷いた。窓の外では夜がより一層深まり、僕たち三人をこの閉ざされた寝室の中に封じ込めている。上松の気配は微塵もなく、ただ僕たちが共有する命の熱量だけが、この部屋の唯一の真実として存在していた。
私たちは映画の続きを見ることも忘れ、ただ互いの存在を、その喉の奥の震えを確かめ合いながら、深い眠りの淵へと身を委ねていった。死が彼女たちを連れ去るその日まで、この歪で、痛々しく、それでいて何にも代えがたい「家族」の形を守り続けることを、僕たちは無言のうちに誓い合っていた。