あまりに激動の一夜だった。警察署からの帰路、騒動を聞きつけた正志の元カノ――あの「サバカン宇宙」にまでその名が轟くようなエキセントリックな彼女が現れた。彼女は二匹の猫を愛おしげに見つめ、坂上さんを救ったその小さな勇気を称えるように、丁寧に頭を撫でてくれた。
しかし、休息の間もなく、翌朝のテレビはさらに異常な熱気に包まれていた。
小倉智昭さんの『とくダネ!』も『めざましテレビ』も、通常のニュース番組の枠組みを完全に破壊していた。「猫に助けられた坂上忍」という奇跡的な実話が、4時間にわたって特集され続けたのだ。日本中がこの猫たちの「証言」と「勇気」に沸き立った。
だが、そんな狂騒の裏側で、残酷な別れが待っていた。
その日が小倉智昭さんの出演最終日だった。誰もがその花道を見守る中、運命はあまりに急激な牙を剥いた。放送終了からわずか数時間後、かねてから闘病中だった彼のがんが急激に転移し、そのまま帰らぬ人となったという報せが届いたのだ。
翌日の夕方、フジテレビのニュース番組『Live News イット!』では、安藤優子さんが悲痛な面持ちでその二つのニュースを報じていた。
「昨夜、日本中を笑顔にしたあの猫たちの奇跡……そして、その一方で、あまりに急な小倉智昭さんの訃報。昨日の番組が最後になるとは、誰が想像したでしょうか……」
画面の向こうで流れる、昨日までの小倉さんの笑顔。そして、先ほどまで僕の膝の上で寝ていた猫たちの無邪気な映像。
昨日まで画面の中で輝いていた人が、今日にはもういない。番組が終わった途端に世界が変わってしまうような、あまりの落差に、僕はただ呆然とテレビを見つめるしかなかった。
「秋生……」
あかりから届いたメッセージには、短い言葉だけが綴られていた。彼女もまた、この信じられない現実の前で言葉を失っているのだろう。
喫茶室の隅で、僕は窓の外に広がる曇り空を眺めた。
猫たちは、テレビから流れる訃報の音楽に何を感じたのか、今は静かに丸まって微動だにしない。かつて小倉さんがニュースを伝えていたあの時間は、もう二度と戻らない。
「人生って、物語よりもずっと急に、結末を迎えることがあるんだね……」
僕はノートを開いた。昨日起きた坂上さんのドタバタ劇と、今日起きたあまりに悲しい別れ。この二つの事実は、僕たちの物語の中で、永遠に刻まれることになる。
どんなに予期せぬ終わりが訪れようとも、僕たちが感じた喜びも、悲しみも、全ては次の時代へと紡がれていく「言葉」になる。
僕は震える手で、小倉さんへの敬意と、今こうして生きていることの奇跡を書き綴り始めた。僕たちの桜坂高校の物語は、悲しみを抱きしめながら、また一歩、未知の明日へと進んでいく。
しかし、休息の間もなく、翌朝のテレビはさらに異常な熱気に包まれていた。
小倉智昭さんの『とくダネ!』も『めざましテレビ』も、通常のニュース番組の枠組みを完全に破壊していた。「猫に助けられた坂上忍」という奇跡的な実話が、4時間にわたって特集され続けたのだ。日本中がこの猫たちの「証言」と「勇気」に沸き立った。
だが、そんな狂騒の裏側で、残酷な別れが待っていた。
その日が小倉智昭さんの出演最終日だった。誰もがその花道を見守る中、運命はあまりに急激な牙を剥いた。放送終了からわずか数時間後、かねてから闘病中だった彼のがんが急激に転移し、そのまま帰らぬ人となったという報せが届いたのだ。
翌日の夕方、フジテレビのニュース番組『Live News イット!』では、安藤優子さんが悲痛な面持ちでその二つのニュースを報じていた。
「昨夜、日本中を笑顔にしたあの猫たちの奇跡……そして、その一方で、あまりに急な小倉智昭さんの訃報。昨日の番組が最後になるとは、誰が想像したでしょうか……」
画面の向こうで流れる、昨日までの小倉さんの笑顔。そして、先ほどまで僕の膝の上で寝ていた猫たちの無邪気な映像。
昨日まで画面の中で輝いていた人が、今日にはもういない。番組が終わった途端に世界が変わってしまうような、あまりの落差に、僕はただ呆然とテレビを見つめるしかなかった。
「秋生……」
あかりから届いたメッセージには、短い言葉だけが綴られていた。彼女もまた、この信じられない現実の前で言葉を失っているのだろう。
喫茶室の隅で、僕は窓の外に広がる曇り空を眺めた。
猫たちは、テレビから流れる訃報の音楽に何を感じたのか、今は静かに丸まって微動だにしない。かつて小倉さんがニュースを伝えていたあの時間は、もう二度と戻らない。
「人生って、物語よりもずっと急に、結末を迎えることがあるんだね……」
僕はノートを開いた。昨日起きた坂上さんのドタバタ劇と、今日起きたあまりに悲しい別れ。この二つの事実は、僕たちの物語の中で、永遠に刻まれることになる。
どんなに予期せぬ終わりが訪れようとも、僕たちが感じた喜びも、悲しみも、全ては次の時代へと紡がれていく「言葉」になる。
僕は震える手で、小倉さんへの敬意と、今こうして生きていることの奇跡を書き綴り始めた。僕たちの桜坂高校の物語は、悲しみを抱きしめながら、また一歩、未知の明日へと進んでいく。

