坂上さんからの提案は、まさに逆転の発想だった。連れて行けないなら、こちらが「王国」そのものを連れてくればいい。僕たちがそれぞれの日常を守りつつ、物語を広げる。それは、分断されたパンデミックの時代に最もふさわしい、共生の形のように思えた。
「それなら、最高の案ですね。ぜひお願いします!」
僕がそう答えると、坂上さんは電話の向こうで豪快に笑った。「よし、じゃあ準備しとけよ。金曜の夜、お前の家を日本一賑やかな『出張動物王国』にしてやるからな!」
そして約束の金曜日、夜7時。
時計の針が時を告げると同時に、我が家の玄関から不思議な気配が漂い始めた。でっかい猫が、普段ののんびりした性格からは想像もつかないほど敏捷に、玄関のドアの前へと歩み寄ったのだ。耳をぴんと立て、ドアの向こうから聞こえる気配に全神経を集中させている。
「……お前、わかるのか? 坂上さんが来るって」
僕がそう呟いた瞬間、ピンポーン、と軽快なチャイムの音が響いた。
ドアを開けると、そこには大勢のスタッフと共に、坂上さんと、彼が大切に育てている何匹もの個性豊かな猫たちが、専用のケージやキャリーバッグに入って待っていた。
「よお秋生くん! 待ちに待った『コラボ王国』の始まりだ!」
坂上さんの声が響くと、でっかい猫は「ニャアァ!」と短く応え、足元にすり寄った。チビ猫も遅れてやってきて、ドアの隙間から覗く「客人」たちに興味津々な様子で尻尾を揺らしている。
4時間の生放送がスタートした。
僕の家のリビングは、瞬く間にスタジオへと変貌した。画面の向こうには、坂上さんの「王国」の猫たちと、僕の家の「猛獣」たちが一つの空間にいるという、奇跡のような光景が広がっている。
「さあ、みんな見てくれ! ここは千葉の、ある物語を紡ぐ少年の家だ。猫同士、どう対面するのか見てみようぜ!」
坂上さんがケージを開けると、次々と猫たちがリビングへ飛び出してきた。最初は互いに警戒し、低い唸り声を上げあっていたけれど、次第に興味が勝り、鼻と鼻を突き合わせて挨拶を交わし始めた。
でっかい猫は、自分の縄張りに来た先輩猫に対して、敬意を表すようにゆっくりと瞬きをした。チビ猫は、坂上さんの猫の一匹にちょっかいを出しては逃げ回り、部屋中を走り回る。
その様子を、オンラインで見守る理子ちゃんや佐藤たちも、チャット欄で大盛り上がりだ。
『やばい、猫の会議が始まった!』
『秋生の家のリビングが、今や日本で一番平和な場所になってるぞ!』
ルナさんも、汐見先生も、その様子を画面越しに見て微笑んでいる。
「動物たちにも言葉があるなら、きっと今、彼らは僕たちの物語について語り合っているんだろうね」
汐見先生の言葉が、僕の胸に響く。
このパンデミックという閉ざされた夜に、テレビの電波とネットの絆に乗せて、僕たちはただ猫たちが寄り添うだけの「何でもないけれど、尊い時間」を共有していた。
坂上さんが僕の隣に座り、カメラに向かって言った。
「結局さ、人間が分断されても、猫たちは繋がるんだよ。秋生くん、この光景、お前の物語のクライマックスに書き足しておけよ」
僕は小さく頷き、その光景をスマホに収めた。
かつては孤独に雨を眺めていた図書室の少年が、今や日本中の注目を集めながら、大切な家族たちと共に聖なる夜を彩っている。窓の外の暗闇さえも、今は優しい光の予感に満ちていた。
「それなら、最高の案ですね。ぜひお願いします!」
僕がそう答えると、坂上さんは電話の向こうで豪快に笑った。「よし、じゃあ準備しとけよ。金曜の夜、お前の家を日本一賑やかな『出張動物王国』にしてやるからな!」
そして約束の金曜日、夜7時。
時計の針が時を告げると同時に、我が家の玄関から不思議な気配が漂い始めた。でっかい猫が、普段ののんびりした性格からは想像もつかないほど敏捷に、玄関のドアの前へと歩み寄ったのだ。耳をぴんと立て、ドアの向こうから聞こえる気配に全神経を集中させている。
「……お前、わかるのか? 坂上さんが来るって」
僕がそう呟いた瞬間、ピンポーン、と軽快なチャイムの音が響いた。
ドアを開けると、そこには大勢のスタッフと共に、坂上さんと、彼が大切に育てている何匹もの個性豊かな猫たちが、専用のケージやキャリーバッグに入って待っていた。
「よお秋生くん! 待ちに待った『コラボ王国』の始まりだ!」
坂上さんの声が響くと、でっかい猫は「ニャアァ!」と短く応え、足元にすり寄った。チビ猫も遅れてやってきて、ドアの隙間から覗く「客人」たちに興味津々な様子で尻尾を揺らしている。
4時間の生放送がスタートした。
僕の家のリビングは、瞬く間にスタジオへと変貌した。画面の向こうには、坂上さんの「王国」の猫たちと、僕の家の「猛獣」たちが一つの空間にいるという、奇跡のような光景が広がっている。
「さあ、みんな見てくれ! ここは千葉の、ある物語を紡ぐ少年の家だ。猫同士、どう対面するのか見てみようぜ!」
坂上さんがケージを開けると、次々と猫たちがリビングへ飛び出してきた。最初は互いに警戒し、低い唸り声を上げあっていたけれど、次第に興味が勝り、鼻と鼻を突き合わせて挨拶を交わし始めた。
でっかい猫は、自分の縄張りに来た先輩猫に対して、敬意を表すようにゆっくりと瞬きをした。チビ猫は、坂上さんの猫の一匹にちょっかいを出しては逃げ回り、部屋中を走り回る。
その様子を、オンラインで見守る理子ちゃんや佐藤たちも、チャット欄で大盛り上がりだ。
『やばい、猫の会議が始まった!』
『秋生の家のリビングが、今や日本で一番平和な場所になってるぞ!』
ルナさんも、汐見先生も、その様子を画面越しに見て微笑んでいる。
「動物たちにも言葉があるなら、きっと今、彼らは僕たちの物語について語り合っているんだろうね」
汐見先生の言葉が、僕の胸に響く。
このパンデミックという閉ざされた夜に、テレビの電波とネットの絆に乗せて、僕たちはただ猫たちが寄り添うだけの「何でもないけれど、尊い時間」を共有していた。
坂上さんが僕の隣に座り、カメラに向かって言った。
「結局さ、人間が分断されても、猫たちは繋がるんだよ。秋生くん、この光景、お前の物語のクライマックスに書き足しておけよ」
僕は小さく頷き、その光景をスマホに収めた。
かつては孤独に雨を眺めていた図書室の少年が、今や日本中の注目を集めながら、大切な家族たちと共に聖なる夜を彩っている。窓の外の暗闇さえも、今は優しい光の予感に満ちていた。

