「今日話があるからさ、ちょっと来てくれ」
正夫はそう言って、俺の肩を叩いた。放課後の静まり返った廊下で、俺は無言で頷く。時刻は夕暮れを過ぎ、校舎にはもう誰もいなかった。
僕たちはそのまま、人目のない体育館の裏へと向かった。埃っぽい空気が漂うその場所で、正夫は切り出した。
「あのさ、上松先生のことなんだけど……少し話があるんだ」
正夫の言葉は、確信めいた響きを帯びていた。
「あいつ、あかりの母親に惚れちまっててさ。結婚したのはそのためなんだよ。あかりを一生かけて面倒見るって誓ったんだ。……正直、問題だらけの先生だけど、あかりのことを誰よりも理解してるのは確かだよ」
その告白を聞いて、俺の中で何かがすとんと腑に落ちた。あの男の歪んだ真面目さの理由が、ようやく分かった気がした。
「……そうだよね。確かに、あの人なら信用できるかもしれない。あかりと、あのお母さんと上松先生。あの三人の形を、僕も応援したいと思う」
俺がそう答えると、正夫は少し驚いたような表情を見せたあと、心底安心したように微笑んだ。
「そっか。秋夫がそう言ってくれるなら、もう間違いないよ。あかりを紹介して本当によかった。……あかりのことを、頼むぞ」
正夫はそう言い残し、別れを告げた。三年間、この場所で積み上げてきた僕たちの時間は、ここで一度立ち止まる。俺は正夫の背中を見送りながら、静かな夜道を自分の家へと歩き出した。
正夫はそう言って、俺の肩を叩いた。放課後の静まり返った廊下で、俺は無言で頷く。時刻は夕暮れを過ぎ、校舎にはもう誰もいなかった。
僕たちはそのまま、人目のない体育館の裏へと向かった。埃っぽい空気が漂うその場所で、正夫は切り出した。
「あのさ、上松先生のことなんだけど……少し話があるんだ」
正夫の言葉は、確信めいた響きを帯びていた。
「あいつ、あかりの母親に惚れちまっててさ。結婚したのはそのためなんだよ。あかりを一生かけて面倒見るって誓ったんだ。……正直、問題だらけの先生だけど、あかりのことを誰よりも理解してるのは確かだよ」
その告白を聞いて、俺の中で何かがすとんと腑に落ちた。あの男の歪んだ真面目さの理由が、ようやく分かった気がした。
「……そうだよね。確かに、あの人なら信用できるかもしれない。あかりと、あのお母さんと上松先生。あの三人の形を、僕も応援したいと思う」
俺がそう答えると、正夫は少し驚いたような表情を見せたあと、心底安心したように微笑んだ。
「そっか。秋夫がそう言ってくれるなら、もう間違いないよ。あかりを紹介して本当によかった。……あかりのことを、頼むぞ」
正夫はそう言い残し、別れを告げた。三年間、この場所で積み上げてきた僕たちの時間は、ここで一度立ち止まる。俺は正夫の背中を見送りながら、静かな夜道を自分の家へと歩き出した。

