しゃべる人形

教室の扉を乱暴に開けて、上松が呆れたような顔で顔をのぞかせた。
「お前ら、まだ文化祭も終わってねえっていうのに、もうクリスマスの話をしてるのか?……相変わらず、その二人だけ仲がいいな」
上松の皮肉めいた言葉に、理子ちゃんは構わず快活に笑い飛ばした。
「そうなんだよ、上松くん! 私だってこの後もロケとか予定が詰まってて忙しいからね。準備は今からしておかないと間に合わないの。……だから、今日が最後の練習って決めたんだから、あんたも付き合いなさいよ!」
その言葉に教室の空気が引き締まった。今日が「最後」の練習。文化祭という一つの大きな山場を越える前に、僕たちはこの物語を完成させなければならない。
正志が舞台の配置を確認し、春香たちが小道具の最終チェックに入る。正男もふざけるのをやめ、真剣な眼差しで台本を握りしめた。
教室の中は、熱い緊張感と静かな闘志に包まれていた。
僕とあかりは、最後にもう一度だけ視線を交わした。僕たちの「雨と虹」の話、そしてクリスマスへ繋がる新しい物語の核心部分を、もう一度だけ確認する。
日が暮れかけ、窓の外には黄昏時の紫色が滲み始めている。
僕たちは一心不乱に劇の練習に打ち込んだ。あかりのセリフの一つひとつが、僕の書いた言葉に命を吹き込んでいく。それは文化祭のためであり、同時に、僕たちがこれから迎えるクリスマスのための聖なる予行演習でもあった。
練習が終わる頃には、外はすっかり暗くなっていた。
汗を拭い、荒い息をつく僕たちを、静寂が包み込む。
そして翌朝。
校門をくぐると、昨日までの静けさが嘘のような喧騒が待っていた。僕たちの文化祭が、幕を開けた。