学校に到着すると、グランドではすでに正志と理子ちゃんがいた。
二人のリズムはいつも決まっている。朝の十分間で入念なストレッチをし、練習の合間に正男を軽くあしらって吹き飛ばし、終わればすぐに二人だけの世界へ潜り込んでいく。
特に夜の図書室は、彼らにとっての聖域だった。400ページにも及ぶ『運命の詰め、奇跡の物語』の台本を広げ、どのセリフを残し、どのシーンを削るか。二人は黙々と議論を重ねる。それは単なる作業ではなく、彼らにとっては紛れもない「図書館デート」だ。頭を寄せ合い、ページをめくる指先が触れ合うたび、そこには劇の脚本以上の重なりが生まれている。
そして、理子ちゃんが劇のロケやリハーサルで劇場へ向かう時、正志は必ずその影のように寄り添っている。劇場という非日常の空間で、二人はまた別の表情を見せる。
周囲から見れば、彼らは文化祭の劇の練習に没頭している熱心な生徒かもしれない。でも、僕にはわかる。彼らが必死になっているのは、劇の完成度だけじゃない。この長い物語が終わってしまったら、二人の時間はどうなるのだろうか。そんな予感に抗うように、彼らは台本を読み込み、ロケ地を巡り、時間を引き延ばしているのだ。
正志のその一途な姿と、理子ちゃんの凛とした横顔。僕が学校で時間を稼ぎ、あかりの手を握りしめているのと全く同じ、切実な「生」の執着がそこにはあった。
彼らが図書室で語り合う言葉は、きっと劇の台詞を超えて、二人だけの秘密の約束へと変わっていくのだろう。この学校の図書室は、僕たちにとって、大人たちが計算する利権や建築基準法とは無縁の、物語を愛し、人を愛するための唯一の場所なのだ。
練習の合間、遠くで正男がまた正志に投げられ、のんびりとした声を上げている。その日常の騒がしさと、図書室から漏れてくる二人の密やかな会話。その対比さえも、この劇の一部のように感じられた。
僕もまた、あかりの元へ向かおう。あの二人が台本と向き合っているように、僕たちもまた、僕たちだけの物語を、今日という一日の中に書き込んでいくために。
二人のリズムはいつも決まっている。朝の十分間で入念なストレッチをし、練習の合間に正男を軽くあしらって吹き飛ばし、終わればすぐに二人だけの世界へ潜り込んでいく。
特に夜の図書室は、彼らにとっての聖域だった。400ページにも及ぶ『運命の詰め、奇跡の物語』の台本を広げ、どのセリフを残し、どのシーンを削るか。二人は黙々と議論を重ねる。それは単なる作業ではなく、彼らにとっては紛れもない「図書館デート」だ。頭を寄せ合い、ページをめくる指先が触れ合うたび、そこには劇の脚本以上の重なりが生まれている。
そして、理子ちゃんが劇のロケやリハーサルで劇場へ向かう時、正志は必ずその影のように寄り添っている。劇場という非日常の空間で、二人はまた別の表情を見せる。
周囲から見れば、彼らは文化祭の劇の練習に没頭している熱心な生徒かもしれない。でも、僕にはわかる。彼らが必死になっているのは、劇の完成度だけじゃない。この長い物語が終わってしまったら、二人の時間はどうなるのだろうか。そんな予感に抗うように、彼らは台本を読み込み、ロケ地を巡り、時間を引き延ばしているのだ。
正志のその一途な姿と、理子ちゃんの凛とした横顔。僕が学校で時間を稼ぎ、あかりの手を握りしめているのと全く同じ、切実な「生」の執着がそこにはあった。
彼らが図書室で語り合う言葉は、きっと劇の台詞を超えて、二人だけの秘密の約束へと変わっていくのだろう。この学校の図書室は、僕たちにとって、大人たちが計算する利権や建築基準法とは無縁の、物語を愛し、人を愛するための唯一の場所なのだ。
練習の合間、遠くで正男がまた正志に投げられ、のんびりとした声を上げている。その日常の騒がしさと、図書室から漏れてくる二人の密やかな会話。その対比さえも、この劇の一部のように感じられた。
僕もまた、あかりの元へ向かおう。あの二人が台本と向き合っているように、僕たちもまた、僕たちだけの物語を、今日という一日の中に書き込んでいくために。

