しゃべる人形

浜野駅の快速改修工事のときでさえ、これほど騒ぎにはならなかった。
今回の地下道工事は、もはや地域の常識を逸脱していた。深夜に響き渡るブルドーザーの地響きは、市原の静かな住宅街を執拗に震わせ、苦情の電話は一日中鳴り止むことがなかった。それでも管見屋建設の重機たちは止まらなかった。学校の地下から裏山を突き抜けるその一撃は、まるで地層の奥底に眠る何かを無理やりこじ開けるような、狂気さえ孕んだ作業だった。
丸3年。
僕たちが過ごした季節のすべてが、山を削る音と、コンクリートを流し込む機械音とともにあった。廃院だった病院の面影を残す古い校舎の地下から、親父たちの執念で掘り進められたその道は、完成した今、中央図書館へと続く静寂の動脈となっている。
「あきお、この通路、本当に終わったんだな」
完成したばかりの、まだ冷たく湿った壁面を親父が叩いた。泥と埃にまみれたその手には、確かな達成感が滲んでいた。浜野駅の改修という公共のインフラよりも、この「学校と図書館を繋ぐ」という私的な、しかし壮大な計画に、親父たちは人生の3年間を注ぎ込んだ。
その通路の先には、莉子ちゃんが用意した映画のアーカイブと、中央図書館の膨大な知識が待ち受けている。僕たちは、この地下道に刻まれた3年分の騒音と怒号を背負って、今日も図書館へと歩を進めるのだ。
まるで、過去の騒音を置き去りにするように。