東京駅から乗ったフラミジア号の車内で、莉子ちゃんは窓の外を流れる景色をぼんやりと眺めていた。さっきまでの明るい笑顔とは裏腹に、その横顔には隠しきれない疲弊の色が滲んでいた。
「……ねえ、莉子ちゃん。本当に大丈夫なの? こっちに転校するって、相当大きな決断だよね」
僕の問いかけに、莉子ちゃんは膝の上で小さく拳を握りしめながら、ポツリポツリと話し始めた。
「……今の学校、私には息苦しすぎるの。映画の仕事をしているっていうだけで、妬みや陰口を言われて……。テストの点数も、出席日数も、全部が『女優』という看板の影で評価される。誰も、本当の私なんて見てくれてないの」
あかりが、莉子ちゃんの手をそっと握りしめた。中学時代、自分をいじめから救い出してくれた恩人。あかりにとって、莉子ちゃんはどんなに遠い存在になっても、かけがえのない親友なのだ。
「莉子ちゃん、本当に来てくれるの? 私たちと同じ高校に……」
あかりの声が震えている。それを聞いた莉子ちゃんは、ようやく少しだけ表情を緩め、あかりの目を見つめた。
「うん。あかりちゃんがいる場所なら、私ももう一度だけ、自分らしく笑える気がするから。それに……君が教えてくれたじゃない。努力した分だけ、ちゃんと現実は裏切らないって。今のまま逃げ続けるのは嫌なの」
莉子ちゃんがこっちにやってくる。その事実に、車両の空気が一気に華やいだ。
「すげえな、莉子ちゃんが転校生かよ!」と正志が腕組みをして笑う。遥やあんなも「楽しみ! 女子会がもっと楽しくなるね!」と顔を輝かせた。
「おいおい、このままだと俺たちの学校、どんどん女子ばっかり増えていかないか?」
誰かが冗談めかして言った言葉に、車内には笑いが広がった。先ほどまで僕の胸を締め付けていた「離れ離れになるかもしれない」という予感は、彼女たちの明るい未来図に押し出されるように、少しずつ遠ざかっていくようだった。
フラミジア号がガタガタと音を立てて加速する。その振動は、僕が親父のブルドーザーの上で感じたあの希望と同じリズムを刻んでいた。
「手続き、明日から一緒に手伝うよ」と僕が言うと、莉子ちゃんは「ありがとう」と、今度は心からの笑顔を見せてくれた。
東京から桜坂へ。ただの移動だったはずの時間が、彼女の転校によって、僕たちの物語を決定的に変える旅路へと変わっていく。映画の中では運命に翻弄されて引き裂かれた二人も、僕たちは違う。現実という荒地をブルドーザーで切り開くように、自分たちの手で「一緒にいられる未来」を地ならししていくんだ。
窓の外に広がる景色が、桜坂に近づくにつれて少しずつ色づいていく。
莉子ちゃんの新しい制服姿、教室で笑い合うみんなの風景。まだ見ぬ明日が、これほどまでに待ち遠しく感じられるなんて。僕たちは、それぞれの心の中に、自分たちだけの「奇跡の物語」を書き足しながら、列車に揺られていた。
「……ねえ、莉子ちゃん。本当に大丈夫なの? こっちに転校するって、相当大きな決断だよね」
僕の問いかけに、莉子ちゃんは膝の上で小さく拳を握りしめながら、ポツリポツリと話し始めた。
「……今の学校、私には息苦しすぎるの。映画の仕事をしているっていうだけで、妬みや陰口を言われて……。テストの点数も、出席日数も、全部が『女優』という看板の影で評価される。誰も、本当の私なんて見てくれてないの」
あかりが、莉子ちゃんの手をそっと握りしめた。中学時代、自分をいじめから救い出してくれた恩人。あかりにとって、莉子ちゃんはどんなに遠い存在になっても、かけがえのない親友なのだ。
「莉子ちゃん、本当に来てくれるの? 私たちと同じ高校に……」
あかりの声が震えている。それを聞いた莉子ちゃんは、ようやく少しだけ表情を緩め、あかりの目を見つめた。
「うん。あかりちゃんがいる場所なら、私ももう一度だけ、自分らしく笑える気がするから。それに……君が教えてくれたじゃない。努力した分だけ、ちゃんと現実は裏切らないって。今のまま逃げ続けるのは嫌なの」
莉子ちゃんがこっちにやってくる。その事実に、車両の空気が一気に華やいだ。
「すげえな、莉子ちゃんが転校生かよ!」と正志が腕組みをして笑う。遥やあんなも「楽しみ! 女子会がもっと楽しくなるね!」と顔を輝かせた。
「おいおい、このままだと俺たちの学校、どんどん女子ばっかり増えていかないか?」
誰かが冗談めかして言った言葉に、車内には笑いが広がった。先ほどまで僕の胸を締め付けていた「離れ離れになるかもしれない」という予感は、彼女たちの明るい未来図に押し出されるように、少しずつ遠ざかっていくようだった。
フラミジア号がガタガタと音を立てて加速する。その振動は、僕が親父のブルドーザーの上で感じたあの希望と同じリズムを刻んでいた。
「手続き、明日から一緒に手伝うよ」と僕が言うと、莉子ちゃんは「ありがとう」と、今度は心からの笑顔を見せてくれた。
東京から桜坂へ。ただの移動だったはずの時間が、彼女の転校によって、僕たちの物語を決定的に変える旅路へと変わっていく。映画の中では運命に翻弄されて引き裂かれた二人も、僕たちは違う。現実という荒地をブルドーザーで切り開くように、自分たちの手で「一緒にいられる未来」を地ならししていくんだ。
窓の外に広がる景色が、桜坂に近づくにつれて少しずつ色づいていく。
莉子ちゃんの新しい制服姿、教室で笑い合うみんなの風景。まだ見ぬ明日が、これほどまでに待ち遠しく感じられるなんて。僕たちは、それぞれの心の中に、自分たちだけの「奇跡の物語」を書き足しながら、列車に揺られていた。

