合唱コンクール当日、NHKホールの舞台は、僕たちの練習のすべてを飲み込むほどに巨大で、美しかった。
僕らが歌い上げたのは、手嶌葵の「あせのてがみ」。張り詰めた空気の中、あかりの声と僕たちのハーモニーが重なり、ホールの隅々まで溶け込んでいく。歌い終わった瞬間、会場を包んだ静寂と、その直後に湧き上がった拍手は、一生忘れられないものになった。
さらに驚いたのは、舞台裏での出会いだった。なんと、NHKの番組ロケで来ていた生田絵梨花さんと鉢合わせたのだ。眩しいほどのオーラを纏った彼女が僕たちの歌を褒めてくれたとき、心臓が跳ね上がるかと思った。さらに、正志の彼女――あの「サバカン宇宙に行く」の少女とも再会し、彼女もまた僕たちの歌を聴いて目を細めていた。
結果は、見事「優勝」。
トロフィーを抱え、みんなで顔を見合わせた。手嶌葵のあの歌詞が、今、自分たちの心と重なっていく。
「やれば……努力した分だけ、ちゃんと形になるんだね」
あかりがそう呟いたとき、その瞳には光るものがあった。SNSの画面の中で繰り広げられる虚像や、理不尽ないざこざとは違う、汗を流して掴み取ったこの「現実」の手触り。それは絶対に僕たちを裏切らない。
隣では、あんなや遥が、あかりの言葉に心を打たれ、肩を震わせて泣き崩れていた。正志もまた、誇らしげに胸を張る。
「ああ、そうだな。俺だって柔道の大会で優勝した時、同じ気持ちだったよ」
すると、正男があかりの方を向き、穏やかな口調で言った。
「あかり、お前あれだな。あいつと一緒になってから、本当に強くなったな」
その言葉に、あかりは少し照れくさそうに、でも嬉しそうに微笑んだ。僕はふと、空を見上げた。
「そうだよな。うちの親父だって、浜野駅に快速を止めるっていう、とんでもない無理難題をやってのけたんだ。やれば、人間なんだってできるんだよ」
僕たちはみんなで笑い合った。父さんのブルドーザーの音も、親父の止まらない自慢話も、僕が壊してしまったテレビのノイズも、すべてはこの一瞬に繋がっていたのかもしれない。
NHKホールの外に出ると、空はどこまでも高く、澄み渡っていた。
正解なんてない、先も見えない毎日だけど、今日という日は確かに僕たちの背中を強く押してくれた。僕たちは、それぞれの「物語」を胸に、明日へと歩き出す。
「よし、帰ろうか」
僕の声に、みんなが頷く。手の中には確かな優勝の余韻が残り、僕たちの新しい日々が、ここからまた音を立てて動き出そうとしていた。
僕らが歌い上げたのは、手嶌葵の「あせのてがみ」。張り詰めた空気の中、あかりの声と僕たちのハーモニーが重なり、ホールの隅々まで溶け込んでいく。歌い終わった瞬間、会場を包んだ静寂と、その直後に湧き上がった拍手は、一生忘れられないものになった。
さらに驚いたのは、舞台裏での出会いだった。なんと、NHKの番組ロケで来ていた生田絵梨花さんと鉢合わせたのだ。眩しいほどのオーラを纏った彼女が僕たちの歌を褒めてくれたとき、心臓が跳ね上がるかと思った。さらに、正志の彼女――あの「サバカン宇宙に行く」の少女とも再会し、彼女もまた僕たちの歌を聴いて目を細めていた。
結果は、見事「優勝」。
トロフィーを抱え、みんなで顔を見合わせた。手嶌葵のあの歌詞が、今、自分たちの心と重なっていく。
「やれば……努力した分だけ、ちゃんと形になるんだね」
あかりがそう呟いたとき、その瞳には光るものがあった。SNSの画面の中で繰り広げられる虚像や、理不尽ないざこざとは違う、汗を流して掴み取ったこの「現実」の手触り。それは絶対に僕たちを裏切らない。
隣では、あんなや遥が、あかりの言葉に心を打たれ、肩を震わせて泣き崩れていた。正志もまた、誇らしげに胸を張る。
「ああ、そうだな。俺だって柔道の大会で優勝した時、同じ気持ちだったよ」
すると、正男があかりの方を向き、穏やかな口調で言った。
「あかり、お前あれだな。あいつと一緒になってから、本当に強くなったな」
その言葉に、あかりは少し照れくさそうに、でも嬉しそうに微笑んだ。僕はふと、空を見上げた。
「そうだよな。うちの親父だって、浜野駅に快速を止めるっていう、とんでもない無理難題をやってのけたんだ。やれば、人間なんだってできるんだよ」
僕たちはみんなで笑い合った。父さんのブルドーザーの音も、親父の止まらない自慢話も、僕が壊してしまったテレビのノイズも、すべてはこの一瞬に繋がっていたのかもしれない。
NHKホールの外に出ると、空はどこまでも高く、澄み渡っていた。
正解なんてない、先も見えない毎日だけど、今日という日は確かに僕たちの背中を強く押してくれた。僕たちは、それぞれの「物語」を胸に、明日へと歩き出す。
「よし、帰ろうか」
僕の声に、みんなが頷く。手の中には確かな優勝の余韻が残り、僕たちの新しい日々が、ここからまた音を立てて動き出そうとしていた。

