学校から出された課題は、「親の仕事についてインタビューし、その様子を録音してくる」というものだった。誰しも子供の頃に一度は通るような、ありふれた宿題だ。
他の生徒たちの状況はまちまちだった。あかりの父親は学校の職員として働いているため、あかりの宿題は免除となっていた。春日の母親は境町の風俗店で働いているが、体裁を整えて「サラリーマン」として報告しクリアした。あかりの母親は専業主婦だ。正志の家は、柔道家の父と農家の母がいつも喧嘩ばかりで、結局正志自身が荒れてしまっていた。正志の父は役所の公務員だが、何とも面白みに欠ける。
そうなると、教室で注目を集めるのは必然的に僕の番だった。
「じゃあ、次は僕の親父の仕事だ」
僕が録音してきたのは、ブルドーザーの凄まじい轟音と、浜野駅を快速停車駅にするために奔走する父さんの自慢話だ。教室に響き渡るガラガラという重機の音と、父さんの甲高い声。その滑稽さに、クラス中が笑いの渦に包まれた。結局、ホームルームから始まり、一時間目から四時間目まで、僕たちが用意した動画はぶっ通しで上映され続けた。先生も呆れるしかなかったが、教室の空気は最高潮に達していた。
翌日、僕たちは課題の一環として、父さんが作業しているフラミジアA席駅の建設現場へ見学に行くことになった。現場に着くと、あのボロいブルドーザーがガタガタと地響きを立てながら土を掘り返している。
「これを見守るのが今日の課題か」
現場の騒音は凄まじく、隣にいる友達と会話をしようにも、大声で叫ばなければ耳に届かない。それがかえって非日常的で面白かった。
作業が終わり、夕暮れ時になると父さんがブルドーザーのエンジンを切った。
「おい、帰る時間だ。お前ら、乗れよ」
父さんは無愛想にそう言うと、僕たち全員を大きなブルドーザーの屋根やステップに乗せた。ガタガタガタガタと激しく振動する鉄の塊に揺られながら、学校まで送ってもらうという異様な帰宅路。
「わあ、すごい! これ、面白い乗り物だね! 電車みたい!」
あかりは目を輝かせ、ブルドーザーの振動に身を任せて大喜びしていた。「ディズニーランドに行くよりも、これに乗ってる方がずっと楽しい!」と、彼女はすっかりこの乗り物の虜になってしまった。
風を受け、エンジンの振動が腹の底まで響く。会話なんて成立しないし、埃っぽいけれど、このブルドーザーの乗り心地は、僕たちにとって忘れられない冒険になった。あかりの笑い声と、父さんのブルドーザーが刻むリズム。学校までの道のりが、こんなにも鮮やかな物語になるとは思わなかった。
父さんは相変わらず無口だったが、あかりがあまりに楽しそうにするものだから、その後も事あるごとに「またあのブルドーザーに乗せてほしい」とねだるようになった。父さんの仕事と、僕たちの日常が、このガタガタと音を立てる鉄の塊の上で、不器用に、けれど確かに交差していた。
他の生徒たちの状況はまちまちだった。あかりの父親は学校の職員として働いているため、あかりの宿題は免除となっていた。春日の母親は境町の風俗店で働いているが、体裁を整えて「サラリーマン」として報告しクリアした。あかりの母親は専業主婦だ。正志の家は、柔道家の父と農家の母がいつも喧嘩ばかりで、結局正志自身が荒れてしまっていた。正志の父は役所の公務員だが、何とも面白みに欠ける。
そうなると、教室で注目を集めるのは必然的に僕の番だった。
「じゃあ、次は僕の親父の仕事だ」
僕が録音してきたのは、ブルドーザーの凄まじい轟音と、浜野駅を快速停車駅にするために奔走する父さんの自慢話だ。教室に響き渡るガラガラという重機の音と、父さんの甲高い声。その滑稽さに、クラス中が笑いの渦に包まれた。結局、ホームルームから始まり、一時間目から四時間目まで、僕たちが用意した動画はぶっ通しで上映され続けた。先生も呆れるしかなかったが、教室の空気は最高潮に達していた。
翌日、僕たちは課題の一環として、父さんが作業しているフラミジアA席駅の建設現場へ見学に行くことになった。現場に着くと、あのボロいブルドーザーがガタガタと地響きを立てながら土を掘り返している。
「これを見守るのが今日の課題か」
現場の騒音は凄まじく、隣にいる友達と会話をしようにも、大声で叫ばなければ耳に届かない。それがかえって非日常的で面白かった。
作業が終わり、夕暮れ時になると父さんがブルドーザーのエンジンを切った。
「おい、帰る時間だ。お前ら、乗れよ」
父さんは無愛想にそう言うと、僕たち全員を大きなブルドーザーの屋根やステップに乗せた。ガタガタガタガタと激しく振動する鉄の塊に揺られながら、学校まで送ってもらうという異様な帰宅路。
「わあ、すごい! これ、面白い乗り物だね! 電車みたい!」
あかりは目を輝かせ、ブルドーザーの振動に身を任せて大喜びしていた。「ディズニーランドに行くよりも、これに乗ってる方がずっと楽しい!」と、彼女はすっかりこの乗り物の虜になってしまった。
風を受け、エンジンの振動が腹の底まで響く。会話なんて成立しないし、埃っぽいけれど、このブルドーザーの乗り心地は、僕たちにとって忘れられない冒険になった。あかりの笑い声と、父さんのブルドーザーが刻むリズム。学校までの道のりが、こんなにも鮮やかな物語になるとは思わなかった。
父さんは相変わらず無口だったが、あかりがあまりに楽しそうにするものだから、その後も事あるごとに「またあのブルドーザーに乗せてほしい」とねだるようになった。父さんの仕事と、僕たちの日常が、このガタガタと音を立てる鉄の塊の上で、不器用に、けれど確かに交差していた。

