柔道の畳の上で、対戦相手を鮮やかに背負い投げた瞬間、正志の体には確かな充実感が宿っていた。積み重ねてきた稽古の成果であり、掴み取った初段という証。そして何より、会場で思わぬ再会を果たしたことが、彼の胸を熱くさせていた。
「サバカン宇宙」のロケ現場で出会った彼女。あの頃の思い出と、今の柔道の優勝という達成感が混ざり合い、夕暮れに染まる街を二人で歩く足取りは自然と軽くなった。
街外れのホテルに入り、落ち着いた空間で二人は向かい合った。
「優勝、本当におめでとう。すごかったよ」
彼女が微笑む。けれど、その瞳の奥には少しばかりの翳りがあることに、正志は気づいていた。テレビで彼女の活躍を見ていたと伝えると、彼女は少し俯き、小さく溜息をついた。
「実はね……ロケのことで、いろいろあって。テレビ局の人に、ちょっと……心ないことをされて」
彼女が口にしたのは、業界の裏側にある汚れたセクハラ被害の話だった。彼女が必死に守ろうとしていた場所が、誰かの傲慢さによって傷つけられている。正志は拳を握りしめ、畳の上で相手を投げ飛ばした時のあの情熱が、今度は別の熱となって胸にこみ上げた。
「……そんなことがあったのか」
正志の言葉には、迷いがなかった。
「一人で抱え込むなよ。俺は柔道で初段を取ったばかりだけど、もし何かあったら、いつでも俺に相談してくれ。そんな……セクハラをするようなテレビ局の奴だろうが何だろうが、俺が柔道でぶっ飛ばしてやるからな」
その言葉は、少し不器用で、けれど何よりも誠実な彼らしい決意だった。彼女は最初、驚いたように目を見開いたが、やがてふっと肩の力を抜き、安心したように柔らかな笑みを浮かべた。
「ありがとう、正志。そう言ってもらえるだけで、なんだか強くなれた気がする」
二人は静かにソファに腰を下ろした。柔道の優勝という喜び、そして彼女が抱えていた心の重荷。それらを分け合うようにして、ホテルの部屋の窓からは、街の灯りが遠くで静かに瞬いているのが見えた。
正志は、自分の強さが単に競技のためのものではなく、こうして誰かを守るためのものだと確信していた。彼は再び彼女の目を見て、静かに続けた。
「テレビ局の奴らになんて、お前は絶対負けちゃいけない。俺がいるからな」
彼女は小さく頷き、正志の肩にそっと寄りかかった。夜はまだ始まったばかりだった。柔道の優勝という一つの物語が終わり、今、正志の中で、大切な人を守るための新しい物語が動き出そうとしていた。
「サバカン宇宙」のロケ現場で出会った彼女。あの頃の思い出と、今の柔道の優勝という達成感が混ざり合い、夕暮れに染まる街を二人で歩く足取りは自然と軽くなった。
街外れのホテルに入り、落ち着いた空間で二人は向かい合った。
「優勝、本当におめでとう。すごかったよ」
彼女が微笑む。けれど、その瞳の奥には少しばかりの翳りがあることに、正志は気づいていた。テレビで彼女の活躍を見ていたと伝えると、彼女は少し俯き、小さく溜息をついた。
「実はね……ロケのことで、いろいろあって。テレビ局の人に、ちょっと……心ないことをされて」
彼女が口にしたのは、業界の裏側にある汚れたセクハラ被害の話だった。彼女が必死に守ろうとしていた場所が、誰かの傲慢さによって傷つけられている。正志は拳を握りしめ、畳の上で相手を投げ飛ばした時のあの情熱が、今度は別の熱となって胸にこみ上げた。
「……そんなことがあったのか」
正志の言葉には、迷いがなかった。
「一人で抱え込むなよ。俺は柔道で初段を取ったばかりだけど、もし何かあったら、いつでも俺に相談してくれ。そんな……セクハラをするようなテレビ局の奴だろうが何だろうが、俺が柔道でぶっ飛ばしてやるからな」
その言葉は、少し不器用で、けれど何よりも誠実な彼らしい決意だった。彼女は最初、驚いたように目を見開いたが、やがてふっと肩の力を抜き、安心したように柔らかな笑みを浮かべた。
「ありがとう、正志。そう言ってもらえるだけで、なんだか強くなれた気がする」
二人は静かにソファに腰を下ろした。柔道の優勝という喜び、そして彼女が抱えていた心の重荷。それらを分け合うようにして、ホテルの部屋の窓からは、街の灯りが遠くで静かに瞬いているのが見えた。
正志は、自分の強さが単に競技のためのものではなく、こうして誰かを守るためのものだと確信していた。彼は再び彼女の目を見て、静かに続けた。
「テレビ局の奴らになんて、お前は絶対負けちゃいけない。俺がいるからな」
彼女は小さく頷き、正志の肩にそっと寄りかかった。夜はまだ始まったばかりだった。柔道の優勝という一つの物語が終わり、今、正志の中で、大切な人を守るための新しい物語が動き出そうとしていた。

