しゃべる人形

しとしとと降り続く雨が、窓ガラスを静かに叩いている。今日は台風の影響で、一日中外に出ることは叶わない。部屋の片隅で、あかりと僕は二人きりだった。
「今日は何しようか?」
あかりが小首を傾げて問いかける。僕はテレビの前に座り、溜まっていたDVDを手に取った。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を流し、そのあとに『君と100回目の恋』を再生した。
画面の中で流れる物語に、あかりはすぐに引き込まれた。時折、頬を伝う涙を拭いながら、彼女は小さく呟く。
「やっぱり、いい映画だね……」
そう言って笑うあかりの顔を見ながら、僕は心の中で静かに言葉を紡いでいた。
窓の外に降るこの雨。しとしとと、絶え間なく降り注ぐこの冷たい雫は、ただの天気の崩れじゃない。これはきっと、あかりの涙そのものだ。
あの日、酷い二日酔いに苦しんであかりが流した、あの時こぼれ落ちた苦い液体も。誰かにいじめられて、独りで膝を抱えて流した、あの熱い涙も。あかりの身体から、心から溢れ出たすべての飛沫が、こうして空へ還り、巡り巡って今、空から降り注いでいるのだ。
愛おしいあかりの涙が、僕のすぐそばで雨音を奏でている。
世界中がこの雨に濡れているけれど、僕だけはその意味を知っている。
あかりは映画の結末を見て、また鼻をすする。その横顔を見つめながら、僕はそっと彼女の隣に座った。雨音と映画のセリフが混ざり合う、この閉ざされた空間の中で、僕たちは静かに今日という一日を分かち合っていた。