しゃべる人形

学校の授業よりも、父の隣で動く方がずっと性に合っていた。僕はしばらくの間、学校をサボり、建設現場の仕事に没頭することにした。
浜野ガーリック駅の快速停車に向けたホーム延長工事。僕はその廃材の回収と運搬を一手に引き受けた。あの駅の婆さんの畑へ向かい、ユンボを操って荒れた土地を耕す。慣れない手つきながらも、少しずつ更地を作っていく作業には、教室の机に座っているよりもずっと確かな手応えがあった。
婆さんの畑の横に、快速の長さに合わせたホームの基礎を組んでいく。鉄筋を運び込み、溶接の火花を散らしながら、ホームの屋根の骨組みを一つ一つ組み上げていく。自分の手で駅を作り上げているという実感。それが、世間から少し距離を置いた僕にとって、唯一の拠り所だった。
「おい、もっとしっかり固定しろ。快速が止まるんだ、強風で屋根が飛んだら大変だぞ」
父の厳しい声が飛ぶ。僕は汗を拭いながら、鉄筋を力任せに繋ぎ合わせる。
工事の指揮を執るのは、あの婆さんだ。彼女は常に現場に現れては、「もっとあっちだ」「そこは曲がってる」と、JRの職員や僕たちを怒鳴り散らす。しかし、彼女のその鬼気迫る指揮が、この工事を動かしているのもまた事実だった。
「婆さん、これで快速も止まれるだろ」
僕がそう声をかけると、婆さんは腰に手を当ててニヤリと笑った。その顔は、あの腐ったバナナをJRに突きつけた時と同じ、恐ろしくも愛嬌のある表情だった。
僕が今やっていることは、ただの「工事の手伝い」ではない。
学校という社会からドロップアウトした僕が、自分の手で新しいインフラを組み上げているという、世の中に対する静かな反乱だ。
ホームの屋根が出来上がるたび、僕の心の中の閉塞感も少しずつ晴れていく気がした。
快速電車がこの駅に停まる——その日のことを想像するだけで、今はただ、目の前の鉄筋を組み上げることに夢中になれる。僕は廃材の山の中で、自分自身を取り戻そうとしていた。