「薫。春風,かおる」

「うんうん。爽やかで可愛いね」



私がじっと見つめ返すと,そのこはあははと高い声で笑う。

麦わら帽子にワンピース。

肌は少しだけ焼けていて,せっかくの長い髪はぼっさぼさ。

だけど私は,その子をとても可愛いと思った。



「私は,私はね。潮見 海月!」



……くらげ?

どや顔で名前を教えてくれたくらげに,私は聞く。



「漢字,どうやって書くの? 難しい?」

「んーん。全然! 海の月って書くの」

「へぇ」



海の,海月そのまんま。



「変なの」



ついこぼれた本音に,「あ」と思う。

私は嘘がつけないのだ。

隠し事も苦手。

だから少しだけ,人間関係には苦労していた。