聞こえないはずの声が,今度はするどくはっきり聞こえる。

それはそのはず。

海にいる人も,波も。

私と海月以外,全部がとまっていた。

驚いて,私は声もでない。私はしばらくそうして浮いていた。

海月が静かな声で,



「どいて」



と言う。

すると,私はふわりと浮いて,『海の中』に立った。

どういうこと? すごい。

海が,割れてる。

私がぺたぺたと歩いて戻ろうとすると,海月も私に向かってくる。

やがて,2人は向き合って立つ。

海月は,私の反応を見ているようだった。



「ごめん,びっくりした?」



私は



「うん」



と答える。

だって,本当にびっくりしたから。

嘘をついてもしかたない。