「桜名さん、料理できる?」
由良くんはいつも突拍子も無く話しかけるから、考えていたことが泡みたいにはじけて消える。
虹が透(とお)る泡と、私の濁ったような思いは天と地の差で、比べるのには相応しくないのだろうけれど。
「...下手くそ、かも」
「俺超得意。マカロンも作ろ、一緒に」
料理ができる人にとってもマカロンが難しいことくらいは分かる。
自信ありげに言うのでもなく、無表情な彼に不安を覚えた。
だけど、少し楽しそう。やってみたい。
「じゃあ作り方、調べてくるね」
「家庭科室使えるか聞いとく。んじゃ、暗くなるしそろそろ帰るか」
由良くんと並んで歩く帰り道は、色んなものが目に映る。
道路の脇に咲く小さな花だったり、ピアノ教室から聴こえてくる音だったり。パン屋さんの甘い匂いもする。
同じ道が、朝よりも鮮やかに色付くのはどうしてだろう。
彼の目には何が映ってるんだろう。



