聞こえたのは体育館の入口の重たい扉を閉める音と、



ガチャン



鍵の音。



悪い予感ばっかりが頭に浮かぶ。この時ばかりは見事に予感的中、だなんて望んでいなかった。



「...桜名さん、この幕外して布団にしたら怒られるかな」


「お泊まり決定にしないで...」



今来たのはきっとバドミントン部顧問の先生で、私たちのクラスの体育の授業も担当しているから、あの大きな声には聞き覚えがある。



風紀に厳しいと有名で、この前も、カップルが学校内で手を繋いでいたのが見つかって指導されたらしい、と月ちゃんから聞いた。



だから由良くんは咄嗟に隠れたんだろう。



やましい事なんて決して無いけれど、誰もいない空間に二人きりなんて所を見られたら誤解されて怒られちゃったかもしれないし。



私が体育館に来ちゃったからこんなことに…



「瑞星に連絡するから大丈夫だよ
…あ、スマホ部室だ。ごめん桜名さん、芹沢とかに連絡できる?」



頭の上から普段より優しい声が降ってくるのは、不安なのが、顔に出ていたから?



少しくらいは役に立とうとスマホを起動した。