「なにか見えた?」
「…由良くんが見えた」
「正解。
また下向きそうになったらやってあげる。そうしないと桜名さん、どっかに消えていなくなりそうだから」
だから、と言って由良くんが目線を送ったのは屋上の扉の方。
「桜名さんの大事な人、見失わないで」
なにかを感じて振り向いた先には、目に涙を浮かべている月ちゃん。
私と目が合うとその涙が零れたのが見えた。
「…月ちゃん」
涙を拭うことはせず近づいてきた月ちゃんは、口を開くのよりも先に私の頬を引っ張った。
「弥衣、なにその顔!どれくらい食べてないの?目も腫れぼったいし、クマもできてるよ?ちゃんと寝てないでしょ」
そう叱る月ちゃんも、いつもより元気が無さそうに見える。雰囲気も、声量も。
「すっぴんで学校に行くなんて無理」だったはずなのに今日はメイクもしていないし、毎日のように変わる可愛いピン留めも、ピアスも付けていない。
ごめんなさい、と口を開こうと月ちゃんの両手を頬から離した時、飛びつく勢いできつく抱きつかれた。



