君を好きになる理由なんて、いくらでもあった。



ノーと言わない優しい性格。同じものを飽きもせずに飲むところ。君のやんわりした声音も好きで。



もっと君を知りたい、足りない、って思った。



さすがにバイト中にそんな話は出来なくて、カップに書いたメッセージをスリーブで隠した。



勢いで伝えてしまって緊張は後から付いてきたけれど、後悔は少しもない。



その子が空のカップを持って話しかけてきてくれたのは、ちょうどお客さんが途切れた時だった。



…顔赤い。



ねえ、期待してもいい?



「…17時にバイト終わるんですけど、あと少しだけ待っててもらえませんか」



僕らしくもない小さな声と一緒に口を動かすけれど、上手く話せない。



そんな僕に微笑む君を見て、僕もつられて笑う。



「待ってます」