「お母さん」
ご飯を食べ終わって、睦季がお風呂に入っている時、ソファに座るお母さんに声をかけた。
震えの止まらない手に気づいて、尚更優しい顔をするお母さんは「なあに?」と隣中座るように呼び寄せた。
「…ごめんね」
「弥衣が謝ることないよ。
あのね、辛かったら自分だけを信じればいいの、私たちを見なくてもいい」
「見なくても…?」
「でもね、弥衣が下を向いている時、お母さんも睦季も、それにお父さんも、ずっとずっと弥衣のほうを向いてる。顔が見られなくても、遠くにいても。
気が向いた時でいいから、お母さんたちを頼ってほしいな」
涙が視界を滲ませる。何で作った涙なのか、わからない。嬉しい?申し訳ない?
わかるのは、この言葉を聞けたのは由良くんのおかげだということ。
顔が上げられない、手の伸ばし方を知らない私を見つけてくれたの。



