「ごめんなさい、由良くんの腕震えてる」
「…それ気づいても言っちゃ駄目だから。格好つけさせてよ」
見上げた先にいる由良くんは苦笑いを浮かべて、今にも倒れてしまいそうだった。
残り三駅だし、さすがに大変じゃ…そう思ったけれど、聞き入れてくれるとは到底思えない。
由良くんという人を知ってから数時間しか経っていないけれど、ちょこっとだけわかる。
でもこういうのを頑固って言うんじゃなくて、生真面目でもなくて。
優しいだけなんだと思う。
可哀想だからとか、媚びへつらったりしているわけじゃないって伝わってくるのだから、不思議でしょうがない。
どうして由良くんは、私を見つけたんだろう。
「もう少し、こっちきて大丈夫だよ」
「平気、そんなにくっついたら優羽…さん?に叱られそう」
「…そういうもの?」
「そういうもの」
それきり会話はしなくなって、結局由良くんは降りるまでずっと、距離を保ちながら私の前に立ってくれていた。



