私があの柵を越えていたら、由良くんとこうやって隣に並ぶことは無かった。
優羽の好きな桃ゼリーとプリンを一緒に食べることも無かった。
私の一日は…
「私も由良くんと会って……楽しかった。由良くんのおかげだよ」
「はは、桜名さんにそう思われて光栄です」
「───うわ、満員。退勤時間と被ったか」
「そうだね」
開いた瞬間、スペースの無い車内に後ろから押し込まれて、由良くんとも距離ができてしまった。
強めな香水の匂いとか、イライラしている人の独り言とか。
久しぶりに外に出たから尚更、気分が悪くなるのには十分だった。
痛い…
足、踏まれてるかも。
気づいたって、左には人、右にも人、前後にだって人が詰まっている。
あと何駅かの辛抱、と気を紛らわす為に、人の隙間から見える夜の外を覗こうとした時。
「あの、すみません、彼女の足に乗っかってるみたいで。
桜名さん、こっちおいで」
私の横にいた男の人に話しかけたのは由良くんだった。人と人の間から出てきた手に引かれて、気づけば端の方に移動していた。



