彼は、あの日今日と同じ言葉をくれた。そうだね、少なくとも私は仕方ないから生きているわけじゃなくて、生きたいのだ。



貰ったものを覚えていたいから。



精一杯生きたら、まだ待っているはずの彼に両手でおさまらないほどの思い出をお土産にして、夜が更けても朝が眠りを覚ましても、なにも気にせず話していたい。



今度こそ、三人で。



『新人俳優賞を受け取った今、一番喜んでくれるのは誰だと思いますか?』



『二人、最初に浮かびます。
僕の名前はその大事な二人から一文字ずつ貰ったんです。誰にも言ってないから、この取材を観て驚いてるんじゃないかな』



『成程...由良 結(ゆい)。二人を繋げて「結ぶ」と読むのも素敵ですね。
それでは次に、今回の映画で衝撃の連続だと話題の、完全シークレット作家による脚本について───』



気づけば外はさっぱりした晴れに変わっていた。立ち上がりうんと背を伸ばして、それからノートを撫でた。



優羽からの頼みごとも、最後の手紙も読み終えたノート。



私は知っている、一番後ろから二ページ目に、知らない名前が散りばめられていること。