「優羽、久しぶりだね」
腰を折って、花と掘られた苗字を真正面に見つめる。出会った日は、笑いかけてくれた時は、私よりも高い目線だったはずなのに。
でも、あの時間だけが君だなんて思ってないよ。
心にはいつでも優羽がいる。優羽がよく使ってた言葉もたまに口から出ちゃうこともあるんだよ。夢宵桜のノートだってそうだね。
形の有るものも無いものも、いっぱい見つけたの。
何度も何度もそっちに行こうとしたよ。賢いよね、優羽は。あんなノート残されちゃったら、行くに行けなかったよ。
由良くんは私から目を離さないし、月ちゃんはそんな由良くんと喧嘩ばっかりで、もう一人の友達はいつも「まあまあ」って仲介してくれるの。
最近話すようになった人は、爽やかイケメンって言われてる人気者なんだけど、裏では口が悪くて。由良くんもこんな感じだったのかな?
睦季とお母さんには散々迷惑かけちゃった。私は元気だよって伝えるために、これから家事手伝ったりしたいな。
優羽とノートのおかげで今私はここにいて、笑っていて、貴方のひとつひとつを少しずつ忘れていくと思います。
それでも。
「私はここで生きるよ」
これまでを伝えるには時間がかかって、ようやく目を開けた時には、隣で由良くんが同じように目を瞑っていた。
君を愛することをやめたりなんてしない。増やす方法はわかっても、減らし方は知らないの。
だから、一生忘れない。ずっと優羽の傍にいるから。
これは、あの時の返事。
「───私も、ずっと愛してる」



