どれだけ話しただろう。
後から来た隣の席が観ている映画はもう山場になっているらしく、やや大きめの声がしきりを越えてここまで届く。
「...俺は当事者じゃないし、秋頼とか弥衣ちゃんの気持ちは想像がつかない。
だから俺がそういう顔をするのは多分間違ってるよな」
「そう思ってたらお前に言ってな...」
「秋頼、ちゃんと寂しいって口にした?泣いた?」
そんなところまで気を使わせてしまったんだ、という気持ちはその一言で飛んでいく。
俺は何秒かの間に思い返した。
俺は優羽のことを思って涙を流したか。心の中で何万回も呟いた“寂しい”を口に出したか。
...俺、誰にも、自分にも
「弥衣ちゃんが大事なのとは別だよ。秋頼の気持ちが安定しないと弥衣ちゃんを救えない」
だから、お前の手を引くのは俺にしなよ
俺は泣いた。今まで我慢していた分、涙が止まらなかった。
今日まで。今日だけは弱くいさせてほしい。
そしたらまた明日から君に手を伸ばすから。全部受け止めるから。



