エンドロールの先でも君を恋うから


机の上にあった落書きもないし、机の中は空っぽ。他の人の席に座ってる感覚で落ち着かない。



窓の外の景色だって、一年生の時よりも一階分高くなって空の面積が広まった気がする。



…あ、旧校舎の屋上、ここから見えるんだ。思ったよりも高いかも。



「おまたせ、行こ」



教室までも手を引かれていたのに、また私の手を取った由良くん。



手を繋ぐっていうより、引っ張られてる。



手を離せば逃げられるとでも思ってるのかな。



そのまま靴箱まで来ると、上履きを脱いで40番に入ったスニーカーに履き替えようとする。



私のローファーは5番なので、どう手を伸ばそうと届く気がしない。



由良くん、と話しかけて繋がれた手を見えるように持ち上げる。始めて声に出した彼の名前は、案外自分に馴染んでいたように思えた。



「手、離さないと」


「…あーごめん、完全無意識」


ぱ、とすぐに離れていった手は、私にあった温度も奪っていく。今は彼の手のほうが温かくなっているかもしれない。



あったかい言葉であったかくなって、冷たい手で冷たくなって。人間として機能しているのが気持ち悪い。



それが彼と私が繋がっているようで、それを解こうと私は心の真ん中に優羽を置いた。



…ここにはいたくないんだよ、私。誰かとの繋がりは必要ない。