僕のわがまま、と穏やかに微笑むその瞳に、優羽しか知らない彼女が映っているような気がした。
いつの間にか剥いたリンゴは「もう食べられないよ」とでも言うように茶色に染まっている。
リンゴを見る度に優羽を思い出してしまうだろう。
いや、それも悪くない。
目の前から消えても、思い出くらいは残っていてほしい。鮮やかなままで、一瞬たりとも忘れたくないけれど。
「優羽、お前がいなくなったって幼馴染なのは変わらない。桜名さんが恋人なのも一生変わらない。
今日、優羽が目を閉じても、そばにいるよ」
励ましじゃない。多分これは俺のわがままで。
優羽がいなくなったら、俺はどうしたらいい?
無理だよ、駄目だ。いかないでほしい。俺のことも連れて行ってほしい。離れたら俺はだめになるから。
本当はそう言いたい。
桜名さんを知らない自分なら、あのノートを渡されていない自分なら、汚い気持ちが声に出していたかもしれない。
...二人が大事だから、俺にはまだここでやることがあるから。
「地獄がどんなとこか、見てきて」
「え〜、口の悪い秋頼のほうが地獄に近いんじゃないの?.....っげほ」



